【あくねこ】ちょっと大人のバレンタイン2(/ω\)♡【SS】

2022年7月3日

コチラはSS『悪魔執事と黒い猫』(あくねこ)の『べリアン』と『フルーレ』編になりますヾ(・ω・*)♡

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【べリアン】儚くて、優しい味。

べリアンはいつも通り、私の体調に合わせて紅茶を入れてくれる。
自分の手元には、ラッピングしたマドレーヌがあるのだけど・・・。
今渡すのは不自然だろうか?

『主様、今日はダージリンティーをご用意させて頂きました。主様が風邪をひかない様に、ちょっとしたおまじないです。ダージリンティーに含まれる成分が抗菌、抗ウイルス作用があるんです』
と丁寧に説明してくれる。

紅茶が詳しくなかった私も、べリアンのおかげで詳しくなってきた。
『そう言えば・・・べリアンは何で紅茶が好きになったの?』
ふと、そんな疑問が頭に浮かんで口にした言葉だった。
『・・・えっと・・・話すと長くなるのですが・・・』
そう言うとべリアンは静かにティーポットを置いた。

『これは、私がまだ悪魔執事になる前の話でございます』

─べリアン回想─
?『べリアン、お前契約者になるのか?』
『えっ?私が・・・ですか?何も聞いていないのですが・・・』
?『・・・』
親しそうな間柄の二人が倉庫で話している。
そのうちの一人眉間にしわを寄せ、険しい表情で無言で倉庫から出てくる。

『私が・・・契約者・・・?』
一人残されたべリアンは自分の手のひらを見つめながらそっと呟く。
『まさか・・・ね』
一言呟くと、背筋を伸ばして倉庫を後にする。

─その後─
一冊の分厚い本と憔悴しきったべリアンの姿があった。
?『べリアン・・・』
『・・・・』
?『ほら、これ飲めよ』
『・・・これは・・・』
?『ココに薬と呼べるようなモノはない。今はこのくらいしかお前にしてやれることが無いんだ・・・』
『・・・カモミールティー・・・』

部屋の中に甘酸っぱいリンゴの様な香りが立ち込める。
『・・・ありがとう・・・ございます』
べリアンは一口紅茶を飲むと、少しだけ笑顔になる。

─デビルズパレス 自室─
『それで・・・紅茶が好きに?』
『えぇ。それまで私は紅茶に詳しくありませんでしたから・・・。幼いころに遊んでいた場所にカモミールがあった為、自然と覚えただけです』
べリアンは懐かしむように遠くの方を見ている。

『変な事聞いて、ごめんね』
『いいえ。今ではこうして紅茶を通して、主様の役に立つ事が出来ています。光栄ですよ』

私はバレンタインで用意をしていたマドレーヌを渡す機会を逃してしまってそっと後ろに隠す。
『おや?主様?何か隠されました?』
『・・・っ』
『私は主様の嫌がる事は聞きませんし、探索などもしません・・・。ですが、もし悩み事があるのでしたら・・・』
『もぉ!!』

私はべリアンの前に、綺麗にラッピングされたマドレーヌを差し出す。

『ねぇ。べリアン。一緒に・・・紅茶を飲んでくれないかな?』
『主様・・・?コレは一体・・・?』
『バレンタインだから・・・べリアンが喜ぶかなって・・・』
『わ・・私にですか・・・?』

べリアンはそっと受け取ると
『中を見てもよろしいですか?』
と声をかける。
『・・・』
何も言わずに私はうなずく。

『こ・・・これは・・・マドレーヌ・・・。主様が私の為に?』
『べリアンが美味しいって思ってくれるかは分からないのだけども・・・』
『とっても、優しくて、美味しそうな香りがします』
べリアンの顔が赤くなる。
『ここで、一緒に食べてもよろしいでしょうか?・・・って、こんな事を執事が言ったら執事失格ですよね・・・。申し訳ありません』
『そんな事ないよ』

私はべリアンを椅子に座らせて、慣れない手つきで紅茶を注ぐ。
『主様っ!!私が・・・』
『今度・・・おいしい紅茶の入れ方教えて』
『え・・・』
『べリアンが喜ぶ顔が見たいから』
『・・・主様がそうおっしゃるのなら・・・喜んで』
べリアンは照れたように笑った。

(いつからだろう?私のなかで主様の存在がこんなに大きくなったのは・・・。私が執事である以上、深い関係になってはいけないと言うのに)

『はい。べリアン』

(主様の事を愛おしいと思う気持ち・・・。他の執事達に知られなければいいのですが。誰に許しを請うわけでもないのですが・・・許すのなら、この瞬間が永遠に続くように・・・)

【フルーレ】仮縫いだった日々

『主様、大変お似合いですよ!!流石主様ですっ』
『えっと・・・いつもありがとう。フルーレ』
お城での服は全てフルーレが作ってくれている。
『主様は何を着ても素敵ですよ』
『フルーレはいつも褒めてばっかり・・・』

正直毎日褒められていると、本当にコレでいいのか分からなくなってしまう。
『本当の事です』
『フルーレが作ってくれた服は、どれも私にピッタリのサイズだけど・・・。どうしてわかるの?』
始めてココに来た日から、ずっと疑問に思っていた。

『っ・・・こう言ったら変かもしれませんが、主様が来る前からなんとなくですが・・・分かってた気がするんですよね』
『私が来る前から?』
『想像になってしまうのですが・・・。主様はこんな方・・・だったらいいな。と言うので作っていたと言うのもありますが・・・』

『フルーレって凄いね。私は洋服なんて作れないよ』
『こう言ったらなんですが、人には得意な分野というのがあります。悔しいですけど・・・俺は皆の様に強くはないし・・・天使を倒す事なんて出来ません』
『でも、フルーレはいつも努力しているよ』
『正直、努力だけ何にもならない事だってあるんです。それは・・・自分にも分かってて・・・』
『フルーレ・・・』
『だからって、諦めてたらずっとこのままですし・・・ごめんなさい・・・主様・・・。俺変な事いってますよね・・・』

そう言うとフルーレは静かに部屋を出て行ってしまった。
私はフルーレの後を追いかけようと思ったけど途中で足を止めた。
自室を見るとフルーレの作ってくれた衣装がたくさん並んでいる。

『才能・・・かぁ・・・』

─現実世界 回想─
?『この仕事やってくれた?』
『いえ・・・すいません・・・』
?『もう、やらなくていいから・・・』
『・・・』

?『なんで間違えるの!?』
『・・・すいません』

─デビルズパレス 自室─
『私も・・・ココに来なかったら怒られっぱなしで自分に自信なんて、ちっちも持てなかったんだよな・・・』
私はフルーレにプレゼントしようと思っていた、ラッピングをしたマカロンを手に取る。
『大丈夫。フルーレは強くなれるよ』
そう言い、フルーレを探しに行く事にした。

─森の中─
『フルーレ・・・こんなところにいたんだ』
フルーレは自分の袖で涙を拭う。
『主様、すいません。俺、主様に変な事を言っちゃって・・・』
『そんな事ないよ』
と言って手作りのマカロンをフルーレにに差し出す。

『えっ・・・?主様これは・・・』
『フルーレにバレンタインのプレゼントだよ。初めて作ったから、お口に合うかは分からないんだけど・・・』
『主様・・・俺、本当にうれしいですっ!!』

『ねぇ。フルーレ。フルーレには沢山良いトコロがあるんだよ』
『・・・』
『私はさ、最初から才能なんてある人っていないと思うんだ。好きでずっとやり続けられて。才能なんて言葉は自分以外の誰かが使う言葉なんだと思う。後付けの言葉なんじゃないかなって』
『主様・・・』
『だから、私はフルーレの努力出来る才能って凄いと思うんだ』

フルーレは受け取ったマカロンを見る。
『主様は凄いですね。言葉で人を元気に出来るのですから・・・。本当だったら、俺の役目のハズなのに』
『私はいつもフルーレに元気でいて欲しいだけだよ』
少し笑って言った。

『主様の作った、マカロン。色んな色がありますね』
『フルーレが作ってくれる衣装も色んな色があるから・・・』
『主様。俺絶対、主様を守れる強さを身に付けますね。だから、待っててください』

瑠璃色をした、沢山の光輝く蝶がふわりと空に舞い上がる。
『俺は・・・主様の事が・・・・』
突然吹いてきた風で最後まで聞き取る事はできなかったけど、フルーレの顔には笑顔が戻っていた。

『ねぇ、フルーレ・・・なんて言ったの?』
『えっ・・・』
『最後、聞き取れなくて・・・』
『もぉ・・・!!俺は言いませんよっ!!』

風で乱れてしまった私の髪を、優しく直しながらフルーレが言った。

おまけ♪

以前書いたSSは、コチラ
参考程度に
【あくねこ】ちょっと大人のバレンタイン(/ω\)♡【SS】ハウレスラトが主役です。
【あくねこ】ちょこっと大人のバレンタイン3(/ω\)♡【SS】ルカスナックが主役です。

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