【あくねこ】水面に映る銀色の月と漆黒の影【SS】 ラト編
こんにちわヾ(・ω・*)ゆいなです♪9月になりお月見の季節になりました。
という事は・・・です。
悪魔執事と黒い猫(あくねこ)のラトのお話が書きたくなる季節です☆(ほぼ、それしか書いてないんだけど)
今回はちょっと切ない系で書いてみました。
ハッピーエンド?いえいえ。ちょっと物悲しい感じで切ない様な。
そんな感じで語ってみたいと思います。
満月の夜には会えないから
『ミヤジ、フルーレ。ちょっとお話があるんだけど・・・』
屋敷に帰っていていた主は地下の部屋に行きラトの姿が見えない事を確認すると、ミヤジとフルーレに小声で話しかけた。
『どうしたんだい?主様?』
『何かあったんですか?』
ミヤジとフルーレが心配そうに主に声をかける。
『あ・・・。困った事とかそう言うことじゃなくて、明日の話なんだけど』
『明日・・・』
ミヤジは手帳を取り出し確認すると、小さな溜息をついた。
日付は9月10日。明日は十五夜の満月の日だ。
『もしかして、ラトくんの心配をしているのかな?』
『主様は、本当に優しい方ですね・・・』
ミヤジの言葉を聞きフルーレの表情も曇る。
『あ・・・。突然ごめんね。あのね、逃げてると思われるかもしれないけど・・・。明日は仕事が忙しくて屋敷に帰ってくる事が出来ないと思うの』
『逃げてるとか・・・そんな風に主様の事を思った事はありませんよ?ほら・・・。ミヤジ先生と俺は、こう言ったらなんですが、慣れっこですから。主様は主様の生活があります。そっち優先ですよっ♪』
フルーレは気にしなくていい事を伝えるが、主は苦笑いをした。
屋敷で長い間一緒に過ごしてきたフルーレがその表情に気づかないはずもなく、もっといい言葉かかけられたらいいのにとミヤジの方に視線を移した。
ミヤジは一通りのやり取りを聞いて何か考えている様だった。
『主様。私たち執事は、主様の幸せを一番に願っているんだよ?だから、屋敷の心配はしなくても大丈夫』
『でもっ・・・』
みんなが困っている時には傍にいて力になってあげたい・・・。
普段、守られている私なのだからなおさら・・・。
そう言いかけて、主は言葉を飲み込んでしまう。
きっと、自分がいたとしても何もできないのは分かっているし、ミヤジやフルーレに余計な心配をかけてしまうのも分かっている。
だったら・・・。
『主様は何か考えがあるのかな?』
ミヤジは主の表情をみて何かを察したように、話しかけた。
『あの・・・これを考えてみたんだけど・・・』
二人に見える様に主は一枚の紙を差し出す。
主が考えた事を紙に書いた理由は、ラトが耳がいいのでどこで聞かれているか分からないし、自分の計画を簡潔に伝えるのには一番いい方法だと考えたからだった。
『・・・これって!!』
紙に書かれた文章を一通り読んだフルーレが驚きの声を上げる。
『主様・・・。これは・・・』
ミヤジは難しそうな顔をして主の顔を見る。
『・・・無理かな・・・?』
『・・・』
フルーレはミヤジが話し出すのを待っている様だ。
主自身『ちょっと無理があるかな・・・』と思って考えた事だったので仕方がないと思う。
みんなが心配するのなら、止めよう・・・。
そう思い、紙をしまおうとした時だった。
『フッ・・・』
とミヤジが笑う。
『ミヤジ?』
『主様は本当に私たちの事を考えてくれているんだなと思ってね。ただ、危険がないと言ったら嘘になってしまう。だから、フルーレくんと私で"そうならないように"準備する事にするよ』
『ミヤジ先生・・・』
ミヤジは隣にいる不安そうなフルーレの肩に手を置いて優しく話しかけた。
『安心して欲しい。こっちでの準備は私とフルーレくんで何とかするから』
『・・・一緒に準備できなくてごめんね』
『もぅ。主様は謝ってばかりですねっ♪主様は何も悪い事をしていませんよ?そうと決まれば、忙しくなります。んー。この布はもう秋になるから・・・ちょっと寒いかなぁ・・・こっちの方が主様に似合いそうだし・・・』
楽しそうに布を選び出したフルーレを主とミヤジで見ながら、主はミヤジだけに聞こえる様に小声で
『失敗したら・・・ごめんね』
と伝える。
『いいんだよ。結果が全てじゃない。失敗したらまた一緒に考えよう。歳をとるとどうしても、冒険と言うのが怖くなってね。自分の考えで安易なモノを選びがちなんだ。だから、主様はいいきっかけをくれたと思うよ』
そう言った背の高いミヤジの顔を見上げる様にして見るが、感情は読み取る事はできなかった。
ただ、忙しく動いているフルーレを微笑ましく見ているだけだった。
現実世界と主様
9月10日の夜。
その日は雨で、満月の月は現実世界では見れなかった。
忙しく仕事をしながらも、空を見上げる度にふとラトの事を思い出す。
『・・・大丈夫かなぁ・・・』
そんな独り言を聞いた同僚が話しかける。
『何か心配事?』
『え?あ・・・少しだけ・・・っ』
まさか、他の世界で屋敷の主をしていて・・・という説明が出来るはずもなく少しだけ恥ずかしく思う。
『人間の心配事のほとんどが現実にはならない。ってなんかの本で読んだけど、大抵当たったりするんだよねー・・・。女の勘ってやつ?』
『・・・現実になる?』
『そう言えば、パセリのお団子だっけ?上手くできた?今日って、お月見の日よね。彼氏くんと見れなくて残念だね』
『彼氏とかじゃ・・・』
『まぁまぁ。誰かの為に一生懸命になるってのは悪い事じゃないし。そんなに照れなくてもいいんじゃない?』
同僚はクスクスと笑いながらコーヒーを口に含む。
『もし・・・。なんだけど、大切な人が大変な目に会っていたら一緒にいるのが正解だと思う?』
『楓が質問めずらしっ。このご時世、親の死に目に会えないとかざらだしね。なにがともあれ、ずっとは無理なんじゃない?』
『そう・・・だよね』
『まぁさ。それでも出来る事って言うのはある訳で。そんなに考え込む事もないんじゃない?出来る事しかできないんだしさ。さぁってー仕事。仕事』
持ち場に帰った同僚の背を見送ると、また窓から見える空を見上げる。
しとしとと雨は降り続いていて、主は屋敷で起こっている事を考えると今すぐにでも行きたい気持ちになったがパソコンの時計を見ると0時を越していた。
『9月11日・・・』
支えたい人がいるのに、支えられない。終わらせないといけない仕事が山積みなのに終わらない・・・。
楓は深いため息をつくと、またパソコンでの作業を淡々と始めた。
みんなと過ごした季節
仕事が終わると楓はスーパーに向かう。
朝には雨はやんでいて、雲は残っているものの太陽の日差しが眩しかった。
スーパーの陳列棚は、お月見は何処へやら。今度はハロウィン一色に染まっている。
『パセリ・・・』
徹夜で働かない頭でパセリ売り場に行く。
ラトに会うまではパセリなんか買った事がなかった主は、執事たちに会ってからの事を思い出していた。
珈琲を飲んでいた楓は、紅茶を飲むようになったし。
寝る前にはストレッチもするようになった。
執事たちのアドバイスで体に良いと言われる食事をするようになったし、落ち込んでいる時は話を聞いてもらったり・・・。
秋が来ると、今度は冬が来る。
1年って経つのが早いんだな。
と思いながら慣れた手つきで買い物を済ませていく。
家に帰ってからは楓の料理の見せ所である。
普段はロノが食事の用意をしてくれている為、任せっきりになってしまっているけど料理が嫌いなわけではなかった。
安易な考えでパセリを刻んで、上新粉に混ぜて作ってみたら何とも言えない味で食べるのに苦労した。
『これは・・・駄目かもしれない・・・』
執事たちみんなにも喜んでもらえるようなお団子も作りたいし・・・。
考えた結果、色々な"あん"を作る事にした。パセリはペースト状にして砂糖とみりん、片栗粉を混ぜて・・・。
みんなは当たり障りのないようにみたらしのあんを。
少し季節感も欲しいと思って、栗やサツマイモでアレンジをしてみた。
バスティンは甘いモノが苦手だから、お餅じゃないけど大根おろしとお醤油と出汁のあんを。
『これなら・・・大丈夫だよね?』
楓が作り終え、一息つく頃になると夕方の18時になっていた。
『あ・・・私。寝てない・・・』
そう思ったら、急に眠気が襲ってきた。
屋敷に帰るまで・・・まだ少し時間がある・・・よね・・・。
楓はエプロンを取ると、少しだけベットに横になった。
月夜のお散歩
『主様・・・。ねぇ・・・主様。今日もお顔を見せに帰って来てください。会いたいです・・・。主様・・・』
静まり返っている屋敷に、ラトの声が響いている。
両腕には薄く赤黒い拘束されていた跡が残っていた。
『でも・・・。主様には主様の生活があります・・・。会いたい気持ちは、我慢しないと・・・』
ラトは自分の手首を見ると、跡が残っている場所をそっと抑えた。
『こんな私に会いに来てくれる主様は・・・』
『ラト・・・?』
『主様?』
『起きてたの?』
『・・・今の話聞いていましたか?』
『えっと・・・少しだけ・・・っ』
主はなんて答えたらいいのか分からなくて正直に話しながら少しだけ顔を赤くした。
『なんだか、恥ずかしいトコロを見られてしまった気がしますが・・・。忘れて下さい・・・』
そう言いながらラトはにっこりと微笑んだ。
『また、お会いできて嬉しいです。主様。にしても、その荷物は一体?』
『これは・・・』
ラトは主の大きなバックをみて不思議そうに、首を傾げた。
『えっと、一回厨房に行ってきてもいいかな?』
『厨房に?』
『うん。冷蔵庫を使いたくって』
『分かりました。では、私も一緒に・・・』
『ラトはちょっと私の部屋で待ってて?』
『主様。私に隠し事ですか?ミヤジ先生もフルーレも何か私に隠し事をしているようですが・・・?』
ラトは納得していない様子で主を見ながら、考える様に頬に手を当てている。
主はバックをぎゅっと握りしめると
『ちょっとだけだから・・・?ねっ?』
と言って笑顔で話しかける。
『わかりました』
珍しく色々聞いてこなかったなと思う主だったが厨房に向かい、みんなの分のお団子を冷蔵庫にしまう事にした。
自室に戻るとラトが窓の外を見ていた。
『今日は満天の星空。きっと空には、満月を越したお月様があるんでしょうね・・・』
夜空を見上げる事を許されていないラトは空を見上げようとはしなかった。
『あのね・・・ラト』
『なんでしょう?主様。先ほどから何か私に隠し事をしているのは分かっていますが・・・』
『1日過ぎちゃったけど、お月見をしてみない?』
『・・・主様?』
『お月見をしたいって言ってたから・・・』
そう言うとラトは少し考えた様子で主に話しかけた。
『でも、ミヤジ先生との約束で私は夜空を見上げる事は許してもらっていないんです。たまに破っちゃうこともありますけど・・・』
『ちょっと、考えたんだけど・・・大丈夫だと思う・・・絶対とは言えないんだけど・・・』
『主様が大丈夫と言うなら、きっと大丈夫なんでしょう。実はですね、ミヤジ先生とフルーレに荷物を渡されていてですね・・・。』
そう言うと、部屋の隅からバックを出してくる。
『主様が来たらコレを渡してくれ言われたんです。中身を見ようと思ったら、ミヤジ先生に"絶対に中身は見てはいけない"と言われたので見てはいないんですが・・・。フルーレに聞いても"駄目"といいますし、兄としてちょっと悲しかったんですよね』
ラトからバックを受け取ると、バックを開けて中身を見る。
温かそうなストールが2個入っていて、水筒。小さな小瓶と手紙。大き目のタオルが入っていた。
色合いからして、黒いストールはラトのものだろう。
フルーレが考えて作ってくれたようで、薄い生地なのに心地の良い温かさが手に取ると伝わってくる。
主はストールを手にとりラトの肩にそっとかけた。
『心配だったら、行かなくても大丈夫だよ』
ラトはストールを肩にかけられたストールの端を手に取りじぃっと見ると
『主様の命令なら行かない訳に行きません。それに夜のお散歩は好きです。色んな発見がありますから』
ラトはもう一つのストールをバックから出すと主の肩に優しくかける。
『ふむ。お月見といっても・・・初めてする事なので、どういう風にするのか分からないんですよね』
『えっと、ラトがお気に入りの湖で良いと思うんだ』
『湖?』
水面に映った欠けた月
二つの荷物を持とうと思ってまとめた主にラトは優しく声をかけた。
『主様。それは私の役目です』
そう言ってラトは、荷物を軽々と持ち上げる。
湖までの距離はさほどなかったが、徹夜明けで仮眠程度しかとっていない主には少し長いように感じられた。
『主様?体調が悪いんですか?』
『ううん?そんな事ないよ』
折角のラトのお月見をすると言うのに、身体が言う事を聞いてくれないのは困ったものだな・・・と主は思っていた。
外は満月を一日過ぎた月で白銀色に照らされて灯が無くても木の影は見えるし、主とラトが動く影もはっきり見える。
『ラト、湖近くなったら教えてくれるかな?ちょっとラトには目をつぶっていて欲しいから』
『・・・?』
『ちょっとした、サプライズ・・・?にもならないかもしれないけど』
『いいえ。楽しみにしています』
秋になり始めた空気は少しひんやりとしていて、ラトの手の温もりが伝わってくる。
こっちの世界でも鈴虫とコウロギの声が聞こえ、暑い夏は過ぎ去って今度は寒い冬がやって来るんだなと感じる。
『この先が湖になります』
森を抜けると開けた場所になる。
昼間ラトと主で何度か来たことがあったが、昼間の森と夜の森では風景が全然違っていて主は開けた場所にくるまで道が分からなかった。
『じゃぁ、ラト、私がイイって言うまで目を開けたら駄目だよ?』
『わかりました』
主は自分の手で目隠しをしようかな?と考えたが、ラトの方が身長が高くて届きそうにないのでラトを信じる事にした。
『足元に注意してね?』
『はい』
湖のほとりまで来ると、ラトに荷物をわたしてもらい、シートを敷くとラトに座るように言った。
『んー・・・。なんだかソワソワしますね』
目をつぶったままのラトが呟く。
『ソワソワって?』
『本当は私がすべき事を主様がしてくれてるから・・・。と言うのもありますし、主様と初めてお月見が出来るという事かもしれません・・・自分でもよく分かりません』
主はラトの話を聞きながら、作ってきたお団子を用意して現実世界から持ってきたススキをそっと置いた。
『ミヤジの約束事を破っちゃいけないと思って・・・』
『たまに、破る事もありますけど・・・』
『それは、そうかもしれないけど。今日は約束を破らない方法を考えてみたんだ』
主はラトの後ろに静かに回ると、目をつぶっているラトの上からそっと両手を置いて目隠しをする。
『目を開けたら、水面を見てね?』
『水面を?』
『うん。じゃぁ、目をあけて』
主はそっとラトの目から手を離すと、ラトの表情をみた。
『フフっ・・・なるほど』
『やっぱり、あんまりビックリしなかった?』
水面には満月を過ぎた十六夜の月と満天の星空が写っている。
時折水面には波紋が出来て、月は歪むけどそれはそれで綺麗かなと主は思っていた。
『・・・』
『ラト?』
『主様・・・』
『?』
『有難うございます』
『喜んでもらえたの・・・かな?』
主はラトのお礼を聞いて、ほっと胸をなでおろした。
『水面に映ったお月様。綺麗です。もしかしたら、本当に空に浮かんでいるお月様より綺麗かもしれません』
『昨日は傍にいてあげられなくてごめんね。それと、ちゃんとしたお月見が用意できなくて』
『いいえ。どっちみち、私は満月には記憶がありませんから。それはそうと、さっきから美味しそうなパセリの香りがします・・・』
『・・・もしかして、これ?』
主はラトの前にお団子を差し出す。
『味は・・・よく分からないけど・・・』
『お月様にパセリのお団子・・・』
ラトは躊躇なくお団子を口にするともぐもぐと食べ始める。
『えっと・・・美味しい?』
『おぃひいふぇす』
『いや、食べ終わってからでも・・・』
『・・・・いえ・・・あまりにも美味しすぎて、主様に早く感想を述べたかったんです』
『でも、喜んでくれて良かった』
主は満足そうにしているラトを見てくすくすと笑った。
『おや?顔に何かついています?』
『ううん?違うの。準備した甲斐があったなって』
『私の言った話を覚えていてくれたんですね。"お月見がしたい"と』
『うん。今すぐは無理かもしれないけど・・・いつかできる日が来たら、みんなで一緒にやりたいなって』
『・・・』
ラトは無言で立ち上がると何か思い立ったように湖に飛び込んだ。
『ラト!?』
手からすり抜ける幸せの欠片
───ぱしゃんっ
音を立てて、ラトは静かに月が写っている真ん中まで泳いでいく。
『もぉっ!!』
──ぱしゃんっ
主が後を追うようにして湖に飛び込んだ。
服が身体にまとわりついて泳ぎにくい・・・。
溺れる程ではないけど・・・ラトの所まで・・・。
そんな事を考えて泳いでいると腕を強い力で捕まれ引き寄せられる。
『主様まで湖に入るとは想定外でした』
ラトは不安そうな顔で主の顔を見ている。
『いや、だって、ラトが飛び込むから・・・』
『お月様のうさぎさんを主様にプレゼントしたら喜ぶかなと思ったんです』
『うさぎさん・・・』
『手からすり抜けてしまって無理でした。主様もこうして私からすり抜けますか?』
『ラト・・・』
『今はこうして、私の腕の中にいる主様がいつかいなくなってしまうと考えると・・・今まで感じる事のなかった不安な気持ちになります』
月が映る水面の真ん中にラトと主が二人きり。
何処からか、瑠璃色の蝶がふわふわと飛んできて主の髪にとまった。
『主様に会うまでは、満月の夜になると自我が保てなくなると言うのは仕方のない事だと思っていました。でも、その時間でさえ主様に会いたい。触れていたいそう思ってしまう自分がいます。もし、本当に満月の夜を過ごす事ができたのなら・・・その時は・・・』
そう言いかけたラトは主の姿を見てそっと抱きかかえて、元のいた場所に座らせた。
『主様。調子が悪いんですよね?』
『ん・・・大丈夫・・・』
『無理はいけませんよ?主様』
『ラトに折角喜んでもらおうと思ったのに・・・』
ラトはバッグからタオルを出すと、主の濡れた髪を優しく拭きだす。
『主様が元気でいてくれないと、私が困ります』
バックからタオルを取る際に手に当たった小瓶と手紙が気になりラトは手紙を開けて読んだ。
──ラトくんへ
それは、ミヤジがラトに当てた手紙だった。
──この手紙を読んでいるという事は主様に何かあった場合だと思う。
主様は仕事続きで睡眠をとれていないんだ。もし、なんかあった場合は水筒のお茶を飲ませてゆっくりさせてやってくれ。
その後にフルーレの文字で
──ラト、また湖に飛び込んだでしょ!?
主様に風邪ひかせないでよねっ!!あとは、ラトもっ!!
『みんな、優しいですね・・・』
ラトは手紙を丁寧にしまうと、水筒のお茶を用意して主に渡した。
『主様・・・飲めますか?』
『・・・ん』
主は受け取ったものの、口に付けようとしない。
『ふむ・・・こんな時。強引に飲ませる方法もあるのですが・・・』
『・・・大丈夫だよ・・・。少しだけ眠いだけだから・・・』
そう言って主はラトの髪を撫でようと手を伸ばすと、一度だけ撫でて落ちてしまう。
ラトは主を支えながら話し出す。
『今日はイイお月見日和ですね。楓様。お月様のうさぎさんも喜んでいると思います。だって、私がこんなにも嬉しいんですから。私の我儘ですが、もう少しこのままでいさせてください。私だけの楓様』
ラトは少しだけ、空を見上げる。
白銀をした欠けた満月があるが、ラトにとって辛い過去を少しだけ思い出させるのには充分だった。
──どくんっ
まぁ・・・それは、今は考えない事にしましょう・・・。
今こうしていられる事の方が、私には重要なのですから。
自己犠牲の最果て
主が目を覚ますと、いつもの見慣れた自室の天井が目に入った。
外はまだ暗くてその日の夜なのか、次の日の夜のか主は分からずにいた。
『私・・・あのあと・・・』
主はベットから起き上がるとあたりを見回した。
部屋の隅にはバックが二個置いてある。
『きっと、ラトが運んでくれたんだろうな・・・』
バックの中を確認すると、小さな小瓶はそのまま入っていた。
主はそれを手に取ると食堂まで向かった。
『お。主様起きたんですね。これ、オレびっくりしたんですけど。主様がつくったんですよねっ?物凄くおいしくて。流石オレたちの主様だと思いました』
『ロノ・・・有難う・・・。今日って何日?』
『12日ですね。主様1日中寝ていたので。疲れは取れましたか?』
ミヤジとフルーレには計画の事を話したけど。結局任せきりになってしまって、申し訳ない気持ちになった。
庭園に出るとススキや秋の収穫物で飾られたテーブルがある。
『おぅ。主様起きたのか?』
主の姿を見つけるとボスキが声をかける。
『主様の世界のお月見と言うモノを真似して作ってみたんだが・・・こんな感じでよかったのか?ミヤジさんから聞いて、みんなで用意をしてみたんだが』
『うんうん♪こんな感じ』
あとは、みんなでお団子を食べて楽しめれば・・・。
遠くにミヤジの姿を見つけると主は傍によって声をかけた。
『ミヤジ・・・コレ』
そう言って、主は小瓶をミヤジに手渡した。
『使わなくても済んだのかい?』
『うん。大丈夫だった』
『びしょ濡れの主様をラトくんが連れて来た時は、何があったのかとびっくりしたけどね』
そう言ってミヤジは苦笑いをした。
『多分主様は、何があってもその薬はラトくんには使わなかっただろうね。主様に言うべきことじゃないかもしれないが、時々主様を見ていて痛々しく思う時があるよ』
『痛々しい・・・?』
『自分を犠牲にしてまで相手を救おうとする姿がね。昔の自分と被って・・・。』
『心配かけてごめん・・・』
『いや。いいんだよ。いつかラトくんにも幸せになって欲しいと願っているからね』
ミヤジの大きい手が主の頭を撫でる。
『自分で自分を支えられなくなった時。いや、その前に私に相談して欲しい。私は何があっても主様の味方だよ』
夜空には欠けた銀色の月が輝いていて、主はその欠けた月と自分の過去を重ねていた。
欠けたモノを補えないと知りながら尚も、欠片を探してしまう。
──いつかこの欠片が埋まる日がきたのなら、それは自分じゃなくなる日なんだろうなと朧気ながら感じていた。
おまけヾ(・ω・*)
『やってみたいですね・・・。満月の下で、主様と一緒に"お月見"・・・』
こんな事を、仕事前に言われてしまったら・・・。
リアルちょっと泣きました。(歳をとると涙腺弱くなるのよ・・・)
私『リアル泣いた・・・』
ちまこんぶ『一緒にお月見すればええやんw書け』
ぷち無花果『それ、エエな。待ってるわw』
という訳で今回のお話ができました。
流石に真面目な私(?)なので満月の夜は避けてみました♪
2022.9.3に新ストーリー追加きましたね☆
フルーレの才能が開花しそうな予感♪(むしろ開花しているんだろうな)
個人的にガチャ、思い出はラト優先なので今日からラト祭りですヾ(・ω・*)♡
コンサバトリーのお話や、貝殻レモンの話は1度見ると出にくくなるので『推しキャラ』がいる場合はスクショ必須ですよ♪(思い出には追加されない)
私の携帯スクショが凄い事になってデータをPCに移動しました(´・ω・`)
ある意味容量を破壊的に食うゲームだなと思ったり。
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