【あくねこ】あるじさま と すごす なつ の ひ【SS】ミヤジ ラト編

こんにちわ(。・ω・)ノ゙ゆいなです☆
今日は悪魔執事と黒い猫【あくねこ】のミヤジ、ラトのお話を語って行きたいと思います♪

ちょっとしんみり?救われているかもしれないけど、救われてない様な気もする・・・。

そんな感じで語って行きたいと思いますので、気持ち的に落ち込んでいる方。
引きずり込まれやすい方はご遠慮くださいヾ(・ω・*)

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好奇心は刻として・・・

故人を偲ぶ・・・。

8月の行事が終わろうとしている頃。
寝付けなかった主は、そっと金色の指輪手に取り指にはめた。

世界が変わると、いつもの屋敷の自室。
青白い銀色の月明りが窓から入ってきて、小さな虫の声が聞こえる。

『ただいま』

誰が聞いている訳でもなかったが、主は小さな声でそう呟いた。

用意されていた蝋燭に灯をともして、ぼんやりと炎を眺めていたが主は蝋燭を手に取り取ると、図書室に向かう事にした。

『あの本の続き・・・』

主が気に入っていたのはこっちの世界についての歴史の本で、グロバナー家とサルディス家の関係だった。

遠征でラトが言っていた『サルディス家が統治する牢獄に入っていた』と言う手がかりになればいいだけど・・・。

主は図書館の扉の前まで来るとその足を止める。

少し扉は開いていて、隙間からは温かいオレンジ色の明りが見える。

『こんな夜中に誰かいる・・・?』

そっと扉を開けると、蝋燭の光に照らされた沢山の書物にインクの香り。

その前には静かに寝息を立てているミヤジの姿があった。

主は驚かせない様に静かに近づき声をかけるつもりであったが、ミヤジが書いていた書類が目に入り小さな声をあげた。

『えっ?』

「ラト・バッカの報告書」と書かれた書類の下には日付と小さな文字でラトの行動について詳しく書かれているようだった。

『ん・・・?主様・・・?』
『!?』

ミヤジは目を擦りながら身体を起こして、主に声をかけた。

小さな声であったが、いつでも天使との戦闘の訓練をしているミヤジには充分すぎるくらい大きな声だったのだろう。

『ミ・・・ミヤジっ・・・?』
ミヤジは時計を出して時間を確認すると
『こんな夜中に・・・。主様。寝付けないのかい?』

と優しい笑顔で言うが、主自身は少し困った顔をする。

『そ・・・そんな感じ・・・かな・・・』
ミヤジは椅子に座ったまま、書きかけの書類を見ると手際よく整理を始めた。

『あの、ミヤジ。ちゃんと寝た方がいいよ?』
『そうだね。今日は、少し立て込んでたからね。ただ、もう少しで終わりそうなんだ』
『そ・・・そうなんだ・・・』

主は見てはいけない書類を見てしまったような気がして
『私・・・読みたい本を探してくるからっ。また後でねっ』
と足早にその場を後にした。

報告書、サルディス家・・・ミヤジが監視の役目・・・。
ラトって・・・。

主は当初の目的であるグロバナー家の歴史の本を探すが、いつも本がある所は隙間が出来ており誰かが借りている様子であった。

ラトは、サルディス家の人間で・・・包帯から覗くあの数字は・・・実験台だったって事?
『主様?』
『!?』
背の高いミヤジが声をかけると、主はビックリして動きが止まる。
『すまない。驚かせてしまったかな?』
『すっ・・・少しだけっ』
主は、まだドキドキしている胸を押さえた。

『主様。まだ寝れないようなら、私が話し相手になるが。いかがかな?』
『でも、お仕事があるんじゃ?』
『今日はひと段落付いたし、明日でも大丈夫。自分にとっては主様の方が大事だからね』

そう言うと、ミヤジは主の前に手を差し出した。

ミヤジは・・・。
主は考え事をしながらミヤジの手の上に自分の手を置く。

───あの報告書は、誰の為の報告書?

慣れてくると居心地が悪いから

『主様は私が力を解放した時が怖いとは思うかい?』

自室に帰るとミヤジは主を椅子に座らせ、静かに話しかけてきた。

『神秘的だなって思うし。怖くはないよ』
『性格も変わってしまうからね・・・私は力を解放した時の性格はあまり好きではないんだ』
『私が住んでる世界には妖狐と言う狐の妖怪さんがいるし、狐の神様もいるからあまり違和感ないよ』

そう言って、主は力の開放をしたミヤジの事を思い出していた。
銀色の長い髪に、ふわふわとしてた獣の耳。
多少威圧的なトコロはあるが、それは皆の事を思っての事であり。
基本的な優しい性格は変わっていない事は分かっていた。

『主様は、本当に優しいんだね』

ミヤジは安心したように、ほっと息をついた。

『勿論本当に会った事はないんだけど、多分会えたらミヤジが力を解放した感じなんじゃないかな?って』
『神様・・・ね・・・』

ミヤジは一言呟くと、窓のに目を向ける。

『もし、神がいたのなら・・・何故、私は生かされているのかと問いたいものだ』

そう言ったミヤジの顔は少し寂しそうだった。
穏やかで静かな部屋が、少しだけ緊張した空気になるのを主は感じた。

『・・・』
『申し訳ない。主様が困る事を言ってしまったね』
『ううん。その答えになるかは分からないけど・・・私は生きるのに意味なんてないと思ってるから』
『主様?』
『気分が落ちているとか、不安とかでそう言う事を言っているのではなくて。だから、ラトの気持ちは分かる気もするんだよね』
『ラトくんの事が?』
『本人ではないから、本当の事は分からないけど・・・』

それを聞くとミヤジは主の手に自分の手をそっと重ねた。

『主様は共感力が高い人なんだね。今、私が考えている事が分かるかい?』
『・・・』
『私は、主様に笑っていて欲しいんだ』
『ミヤジは・・・本当は一緒に笑いたいんじゃないの?』
『・・・』

主の手の上に置かれたミヤジの手がその言葉を聞くと、手に力が入りピクリと動く。

『フフッ。きっと私は主様には嘘をつけないだろうね』

ミヤジは主の手から自分の手を離すと自分の前で腕を組み楽しそうに笑う。
部屋の緊張した空気は少しだけ和らいだ気がした。

主は、さっきの書類の事を聞こうか迷ったが、見てない事にして忘れる事にした。

人には知られたくない事もあるし、そうしなければいけない事情もあるかもしれないと考えたからだった。

『主様は今は辛くないのかい?』
『私は・・・』

いつも辛いなんて言ったら、きっと心配されてしまうだろう。

『辛くないよ』

主は笑顔で返事をする。
もう何年も作り笑いをしていたのだから絶対に見抜かれない自信がった。

『そうか。それなら良かった』

──ほらね・・・。
主は心の中で一言呟いた。
その度に胸の奥がチクりと痛む。
もう忘れたはずの古い傷?そんな傷がある事すら覚えていないのに、何故こんなに虚しくなるのか分からなかった。

『ミヤジもあまり無理はしないでね?さっきみたいに図書館で寝てたら心配になちゃうから』
『主様にカッコ悪い所を見せてしまったね。申し訳ない』
『たまには、相手の事じゃなく自分のコトにも気を使ってあげてね?』

静かに刻が流れて、時折秋の虫の声がする。
暑い夏がそろそろ終わりに近づいている事を告げていた。

『私は不器用な人間だけど、主様も私には嘘はつかないで欲しい』
『えっ?』
『主様は人の気持ちを察するのが得意な人間だと思う。その反面、傷つく事も多い。辛い時は頼ってくれて良いんだよ?』

ミヤジの大きな手が主の髪を優しく撫でる。

『えっと・・・』
『主様はとてもいい子だ。だが、イイ子すぎるもの問題だと思う』
『私は・・・』
『主様は何でも一人で抱え込みすぎだよ?』

主にとって、あまりいい時間とは言えなかった。

生ぬるい風が部屋に入って来て身体を包み込む。

ここで本音を言ってしまえば、気まずい空気が流れる。
そう考えると、寒くはないのに主は少しだけ震えた。

『主様?』
『私は大丈夫だから。今日はもう寝るね?お話に付き合ってくれて有難う』
『・・・そうか』
『ミヤジも夜遅いから、ちゃんと寝ないとダメだよ?』
『分かった』

ミヤジはそう言うと、蝋燭の火を消して主の部屋から静かに出ていく。

一人残された薄暗い部屋の中で主は考え事をしていた。

一人で大丈夫・・・。生きていける。誰にも頼らない。信じない。
執事たちみんなの優しさが痛かった。

ココの生活にも、慣れてきたけど・・・。

そろそろ限界かもしれない・・・。

主は椅子から立ち上がり、引き出しから日記を取り出すと一枚一枚破き始める。

これは・・・最初にみんなに会った日。
これは、よく分からなくて戸惑った日。
これは、ナックから屋敷のお金の運用を教えてもらった日・・・。

楽しかった思い出がどんどん壊れていく。
いつだって壊すのは自分自身だった。
壊れない様に、大切にしていたはずなのに。

いつか想定外の終わりが来てしまう気がして怖かった。

───だったら、自分で壊した方がイイ───

ただ、そこに存在(ある)だけで

光のない眼で単調な作業を繰り返す主の腕を、後ろから誰かが掴み止めた。

──ぱしっ・・・──

『!?』

破きかけの日記が床に滑り落ち、紙の端々は宙を舞ってふわふわと辺りに散らばった。

『なっ・・・』
『こんばんわ。主様』

姿を確認する事は出来ないが、声はラトだ。

『どうして・・・?』
『んー・・・。どうしてでしょう?』

ラトは主の腕を掴んだまま、くるっと回って主の目の前に座った。

『ミヤジ先生が心配していました。主様が元気がないと言っていました』
『ミヤジに言われたから来たの?』
『いいえ?"音"が聞こえたからです』
『音?』

ラトは静かに破れた日記を指した。

『紙を破く音・・・?』
主は掴まれていない方の手で紙の断片を拾い目の前に持ってくると、ひらひらと落とした。

『言いましたよね?主様が私の傍にいる限り、主様の味方であると』

そう言って、ラトは主の腕を掴んでいる手に力を込めた。
主の手の先は紫色になって、血管が浮き出ていた。

『ラト・・・』
『私は、天使狩りに主様の力が必要だから優しくしている訳ではではありません。主様は私の前から逃げますか?』
ラトの爪が、ゆっくりと主の腕に刺さっていく。

こんな時・・・。
主は正解の言葉を頭の中で考えていた。
逃げないよ。一緒にいるよ。ずっと、一緒だよ・・・。

ラトの爪を紅く染め、床に主自身の血液の雫が落ちるのを見ていた。

『主様は素敵ですね。私にこんな事をされて、声をあげないのですから・・・。痛かったですか?』

ラトは主の腕を離すと、自分の手についた主の血液を嬉しそうに見ている。

『ねぇ・・・ラト・・・。壊して欲しい』

主は爪の刺さった跡がある腕を見ながら、救いを求める様な、縋る様な掠れた声で小さな声でラトに頼んだ。

『何をですか?』
『私自身を』
『ふむ。壊すのは簡単です』

そう言ってラトは素早く短剣の武器を主の首に押し当てた。

『・・・』

ラトが出してきた武器の乾いた音が耳に残る。

『主様。本当にやり残した事はありませんか?』

囁く様な低くて優しい声は、麻薬の様に甘美で魅力的な誘惑に聞こえる。

『・・・うん』

───もう、疲れた。コレで・・・───

主は静かに目を閉じて、その瞬間を待っていた。

『ラトくん。それ以上は駄目だよ』

静まり返った部屋にミヤジの声が響く。

『ミヤジ先生』

ラトは主に突きつけた武器を緩める事なく、ミヤジを睨むようにして見ている。

『私が・・・頼んだの』

ラトの行動を止めようと近寄ってきたミヤジがその言葉を聞くと足を止めて、静かに話す。

『知ってるよ』
『知っているなら・・・そっとしておいて欲しかったのにっ!!』
『主様。ずっと辛いのに気づけなくて申し訳ない』

ミヤジのその言葉を聞くと、ラトは主の首からゆっくりと武器を下ろした。

『ねぇ?主様。いつか、必ず。みんな死んじゃいます』
『ラト・・・?』
『私も、ミヤジ先生も。フルーレも・・・。一人残らずです。主様も例外ではありません』

武器に映る自分の姿を見ながらラトは呟くように話を続けた。

『これから先、死ぬ方がマシだと思えるような事が何度もあると思います。でも、これまで逃げなかった主様に頑張りましたね。と伝えたいのです』

ミヤジは何も言わずに主の傍に近寄り、そっと傷口の様子を確認している。

『そうしないといけない事ばっかりだったからだよ。好きで生きている訳ではないもの・・・。』

『私は、主様にいつも笑顔で頑張って欲しいなんて思っていない。ただ、存在してくれているだけで有難いなと思っているんだよ?』

ミヤジは自分のハンカチを取り出し、主の腕に優しく巻き付けながら優しく話しかけた。
主は目の前にあった、日記の切れ端の文字を見ながら考えていた。

──私は最初だけ仲良く・・・でも・・・うまくいかな・・・──

人格、感情、個性は誰の為?

翌日、主が目を覚ますとテーブルの上に書類が置かれていた事に気づく。

「ラト・バッカの報告書」と丁寧に書かれた手書きの文字は、昨日の図書室で見たミヤジの字だと言う事はすぐ分かった。

【ラト・バッカ。以下、主の別人格とし・・・】

!?

主は書類を持ったまま固まっていた。

【攻撃的な性格を持ち合わせており、自傷行為をしてしまう恐れあり】

文字は目で追えるが理解が追いついていかない。

『ラトは・・・いないって事?』
そう言うと、力ない主の手から書類が滑り落ちた。

──ねぇ。主様?面倒な事をしている暇なんてありませんよ?──

『・・・ラト』

トントンと主の部屋をノックする音が聴こえる。主は返事をしなかったが、静かにミヤジが部屋に入ってきた。

『主様。読んだかい?』
『・・・うん』

それを聞くとミヤジは散らばってしまった報告書を拾い集める。

『本来なら自分の胸に留めておく方が良いと考えたんだが、いつか主様に知られてしまう日が来ると思ってね』

『ラトは、本当にいないの?ピンク色した長い髪の・・・パセリが好きな・・・』

ミヤジに話しながら指の先を少し動かすと、昨日怪我をした腕がぴりっと少しだけ傷んだ。

『主様。少しだけ手を出してくれるかい?』
『・・・』

主はそっと手を差し出すと、ミヤジは手を握りながらゆっくりと話す。


『誰でも、心にラトくんがいるんだよ』
『・・・』
『ただ、表面上に現れるか。現れないかの違いで』
『私が創った人格?』
『いや、そうじゃない。最初から誰もが持っている平等な個性だよ』

主とミヤジの手の温度が同じくらいになった時に主はふと思った事を口に出してみた。

『執事のみんなは・・・私が創った個性?』
『それは、私にも分からない。だけど、主様が私を必要としなくなった時は・・・』

そう言って手を離そうとしたミヤジの手を主が止める。

『みんな必要だから。私は誰も切り捨てることなく、全員幸せにしてみせるから・・・』
『主様?』

主にはミヤジと重なった手の上からラトの手が見えた気がした。

──主様。これから、忙しくなりますよ?主様が辛い時は、私が支えます。ですから、安心してください──

灰色の雲は小さな雨粒を落として、少しだけ肌寒い。
夏の終わりの土の香りがした。

おまけヾ(・ω・*)♪

久しぶりのあくねこのSSです♪
リアル都合の関係でちょっと忙しくて書けずにいました・・・。

と言う言い訳ですよね・・・。はい。

2022.8.19に公式さんから嬉しいお知らせが(/ω\)

ボイスが増えるんだってっ!!(/ω\)♡
これは、楽しみ♪

たまに思うのです。
いろんなソシャゲやアプリに手をだしては飽きやすい私が・・・。
よく『あくねこ』は続いているなって☆

それだけキャラクターが魅力的なんでしょうね♪

これからもあくねこを応援しています(`・ω・´)ゞ☆

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