【NIKKE】New year New SworD Episode3

前回の続きですヾ(・ω・*)
長いお話になりますので分けてアップしています☆

Episode1(一年最後の夜→月明りの下の出会い)
Episode2(剣を持った姉妹)

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バラ色の未来を描きながら A

──その後、近接戦闘部隊は休む間もなく多くの任務に投入された。

紅蓮が剣を振るうとラプチャーのコアが壊れる音がし、その音は任務の終了を告げた。

『周囲の全ラプチャー、排除完了』
『よし、じゃあ報告するね』

薔花が無線を取り出し、任務終了連絡を始める。

『報告します。このエリアを占領していた全ラプチャーを排除し、人類連合軍代29司令部奪還任務を完了しました』

他の量産型ニケと比べて軽量化され、積極的に活用してラプチャーに奪われた人類の主要施設に潜入し、奪還任務を行うこともあった。

『わあ~レン!ちょっとあれ見て。気持ち悪くない?あれって、本当に機械なのかな?』

薔花は好奇心で前のラプチャーを観察していた。

『観察する余裕があるなら、1体でも多く斬ってくれ!』
『どうしてそんなにせっかちなの~?焦ったところで、斬るべきものは変わらないのよ』

紅蓮に注意をされた薔花は、剣を振りかざすと目の前のラプチャーは真っ二つになった。その様子を見た紅蓮は驚いた顔で薔花を見た。

『心に余裕があれば、もっと上手に斬れる』

そう言って、薔花は屈託のない笑顔で笑った。

──そうして他のニケたちのように、単にラプチャーを排除する任務も遂行した。

多くの任務を引き受けて成果を挙げた分、犠牲も伴った。

紅蓮は地面に倒れている仲間を見つめていた。

『・・・厳しいだろう。頭の一部が完全に破壊されている。これは・・・助からぬ』
『そう・・・』


『・・・』

2人の間に少しの沈黙が訪れた。

『・・・本部に送るために棺を用意してほしいって連絡するね』
『ああ』

──成果を挙げたことによる、前向きな変化もあった

『正式な部隊になるかもしれない?』

人類連合軍の将校の話を聞いた薔花は驚いた顔をした。

『・・・そうだ。驚く事に・・・な』

薔花の隣にいた紅蓮はその話を聞き

『何が変わる?』

と単刀直入に聞き返し、答えたのは薔花だった。

『う~ん、今より安定して部隊を運用できるようになるし、他の部隊に公的に支援要請をしたり、受けたりできるかな?』
『ふむ。あまり実感のない部分だな』

今まで部隊の仲間と共に戦ってきた紅蓮にとっては、他の部隊に支援要請をするなどないと考えていたし、今までとあまり変わらないと考えていたのだった。

『何を言ってるの。名前がつくのよ。もっと現実的な事をいうと、支援物資の質と量が向上するの』
『それは悪くないな』

その話をきっかけに、薔花は将校に本題を訪ねはじめる。

『あ、そう言えば指揮官。私たちに追加支援物資はいつ頃・・・』
『上層部はいったい何を考えているんだか・・・』

独り言を呟いている将校に薔花はもう一度、将校の事を呼んだ。

『指揮官?』
『な、何だ?私を呼んだのか?』
『はい。呼びました。』
『し、指揮官と呼ぶなと言っただろう!階級で呼べ』
『はい。中尉』

薔花はわざと将校の事を「指揮官」と呼んだのは、自分に注意を向け話を聞いてもらう為だった。

『私たちの追加支援物資は、いつ頃届きますか?この間から補給周期が少しずつ長くなってるようですが・・・』
『補給・・・?せ、戦況がどんどん悪化しているからだ!当然、補給品も遅れるに決まっているだろう』

その話を聞いて、薔花は暗い顔をして『・・・そうですか』と小さく一言だけ言った。

『だからもっと努力して、せ、正式部隊になれ!補給物資を受け取ることができるように』

薔花の隣で話を聞いていた紅蓮は無言で将校の事を見ていたが、薔花は笑顔で
『はい、もっと頑張ります』
と答えた。

──任務が難しく、辛くなるほど部隊のニケたちの絆は深まっていった。

地上での任務が終わり、あたりが暗くなる頃。

『ふぅ・・・えっと~。もうこんな時間・・・空も暗いし・・・。拠点に戻るには微妙な時間ね・・・』

その話をきいて紅蓮は崩壊している建物を指さした。

『あそこはどうだ?あそこなら一夜くらいは過ごせるだろう』
『じゃあ今日はここで野営をしましょう!』

そう言って薔花は笑顔になるのだった。

バラ色の未来を描きながら B


紅蓮は窓の近くに座り、見張りをしながら仲間がおしゃべりをしている光景をみつめた。

『・・・平和だな』

薔花は紅蓮の傍に座り静かに話し出す。

『いいと思わない?こういう平和な感じ』
『・・・平和すぎて、任務中であることを忘れているのではないかと疑いたくなるがな』
『最近任務続きで、みんな疲れ果ててたでしょ。たまにはこういう平和な時間もないとね』
『それでも、気を緩めすぎてはいけない』

そう言った紅蓮を薔花は優しい目で見ながら話す。

『分かってるって。レンが部隊を大切に思ってること。みんなが油断してケガをするんじゃないかって心配してるんでしょ?安心して、大丈夫』
『・・・』
『こうやって率先して見張りをしてくれる優しい妹もいるし、みんなああやってリラックスしてるように見えても、剣はそばに置いてるから。だから大目に見てあげてよ』

地上には銀色の月が出ていて、銀色の光が自分や仲間を守る剣を照らしている。
紅蓮の手にも、姉である薔花の手にも、仲間たちの近くにも同じモノがあった。

『久しぶりでしょ?こうやってのんびりするのも』
紅蓮は一度目を閉じると薔花の説得に『・・・分かった』と一言返事をした。

そう言った紅蓮を見て薔花は笑顔になると

『そういうわけで~!みんなが休んでいる間にも頑張ってくれているレンのために~!ジャーン!』

小さな二つの杯を取り出した。

『それは何だ?』
『これ?補給品の中にあったの』

薔花は訝しげな顔をする紅蓮の目の前で酒瓶を持ち上げる。

『一緒に一杯どうかなって』
『酒!?何を考えている?任務中に酒など・・・!』
『まあまあ、いいじゃない。1杯だけよ。ニケになったのに、まさかこれ一杯で酔うはずがないでしょ?』
『しかし・・・!』

薔花の提案を拒み続ける紅蓮だが、薔花は

『そんな硬いこと言わずに~ほら~』

静かに杯に酒を注ぎ紅蓮にわたした。
その様子を無言で見ていた紅蓮だったが、紅蓮はわたされた杯をうっかり受け取ってしまう。

『かんぱ~い!』

薔花が持った杯と紅蓮が持った杯が、いい音を立てて当たる音がする。
薔花と紅蓮は静かに一口酒を飲んだ。

『う~ん、いい香り。バラの香りかな?』

喜ぶ薔花とは対照的に顔をしかめているのは紅蓮だ。

『・・・うっ』
『どうしたの?体に合わなかった?』
『苦い・・・』
『苦い?』

紅蓮の一言を聞いて不思議そうな顔をする。
やっとの思いで酒を一口飲んだ紅蓮がさっきよりも大きな声で薔薇花に不満を言った。

『苦すぎる!なんでこんなものを飲むのだ!?』
『あはは。そっか~苦かったか~』

状況が理解できた薔花はその場で、嬉しそうに笑った。

『私はもういらぬ』
『残念~。私は気に入ったのに』

紅蓮はその場に杯を置くと、薔花は自分の杯にゆっくりと追加の酒を注ぐ。

『昔、人間だった頃。その時もこうやって一緒にお酒をのんだこと、あったのかな?』

酒を見つめながら話す薔花に対し、紅蓮も過去の事を思い出しては話そうとするが結局分からなかった。

『・・・分からない。私たちが覚えているのは、姉妹だった、ということだけだ』
『ふふ、不思議だよね。どうしてそれだけは覚えているんだろう。フェアリーテールモデルの適合者じゃなければ、普通は何も覚えていないか、全部覚えているかのどっちかなのに』
『忘れられない記憶だったのだろう』

薔花は自分の杯から紅蓮に目を移す

『え?』
『死んでも姉さんのことは忘れないと思っていたのではないか?』
『・・・!・・・そっか~。忘れられないほど仲がよかったか、悪かったか、どっちかだろうね。忘れられない姉妹か・・・。ふふ、どっちにしても、いいね』

紅蓮を見て嬉しそうに笑うと、薔花は杯の酒を飲み干し床に横たわった。

『風の吹くまま~雲の流れるまま~思うがままに~そんな人生を生きてみたいな~』
『何かね?その遊び人のような詩は?』
『う~ん、将来の計画みたいなもの?』
『またふざけたことを』
『さっきみんなに、戦争が終わったらどうするのって聞いたら1週間ずっとベットでゴロゴロしてたいって子もいたし、温かいスープを鍋いっぱいに作って食べたいって子もいたし、読みたかった漫画を読破したいって子もいたわ』

楽しそうに話し続ける薔花は思い出したとっておきの話を、紅蓮に話しはじめる。

『あ、そう言えばこんなのもあった!すごく有名になって、ゴッデス部隊と一緒に任務に投入される!』

紅蓮は一連の話を聞いた後、素直に自分の感想だけを述べた。

『本当につまらぬことばかり夢見ているのだな』
『まあ、こういう時代だからね~。夢の中でしか叶えられない事ばっかりだから。あ、ゴッデス部隊と一緒に任務するっていうのが、一番可能性あるかな?』
『・・・』

紅蓮は黙ってその話を聞いていた。

『そういうレンは何がしたいの?』

『・・・さあ。私は・・・』

紅蓮は少し考えた後に言葉を続けた

『武装を解いて、姉さんと手合わせしてみたい』
『手合わせ?武装を解いて、私と手合わせするのが・・・レンのしたいことなの?』
『・・・』

そうして、また黙ってしまった紅蓮に対して楽しそうに笑いながら薔花が話す

『何それ~、一番つまらないじゃない』
『・・・そうか。私もつまらぬことを言ってしまったようだ』
『でしょ?そういうものなのよ~』

優しく頬をなでる夜の風。
遠くから聞こえる戦友たちの笑い声。

『ああ、いいね~。次はみんなで一緒に飲もうか?こうやって2人で飲んでみて、すごくよかったから~。みんなで一緒に飲みたくなったの。う~ん、今年最後の日。初日の出を見ながら飲みたいな。今年一年お疲れ様、って労って新年をお祝いして。チームの団結のためにも』

『・・・好きにするがいい』

『ふふ、支援箱の中にいいお酒があったんだよね。何ヵ月か熟成させたら、もっとおいしくなるかな~?』
『余計苦くなりそうだ・・・』

その夜、2人は過去を想いながら思い出を作り、共に笑った。

──決して来ることのない。バラ色の未来を描きながら──

永遠など無い

紅蓮と指揮官は2時間ほど歩き、丘の上にある空き地に到着した。

『さあ、ここだ。ここから日の出が綺麗に見えるのだ』
『ここが・・・?』

紅蓮は明け方の日が登っていない空に指さす。

『うむ。一杯やるのに、これほどの場所はなかろう』

そう言うと、紅蓮は近くにあった大きくて平らな岩の上に腰掛けた。

『涼しくていいのう。ぼっちゃんも早く来てすわるといい。歩き疲れたであろう?』
『・・・ああ』

二時間も歩き続けて火照った身体の隙間から冷たい風た通り抜けて行く。
指揮官は紅蓮と同じように岩の上に腰掛けた。

『ふむ。道中邪魔者はすべて片付けた。あとはここで日が登るのを待つのみだ。そういうわけで、日の出まで!』

紅蓮は荷物の中から、ごそごそと何かを取り出した。

『ジャーン!』

これを楽しみにしていたと言う風に紅蓮は嬉しそうに酒を用意をし、最後にふたつの杯を並べた。

『これは・・・。いつ準備したんだ?』
『もちろん。最初にだ。あそこでぼっちゃんに会わなければ、1人でもここに来るつもりだったのだよ』

1人でも・・・と言う言葉に対して2つの杯があるのはおかしいと思った指揮官は一つの杯を指さしながら
『杯が2つある』
と紅蓮に尋ねた。

『まあ、よいではないか。杯1つであろうが、2つであろうが~。おいしく飲めれば、それでいいのだ』
『・・・』

これ以上、深く詮索しないでくれ・・・。
そう感じる紅蓮の言葉に、指揮官はそれ以上聞かないことにした。
紅蓮はそれに対して指揮官が何も聞いてこないと分かると杯に静かに酒を注いだ。

『その後もずっと成果を挙げ続けたのか?』

指揮官はそれ以上杯の話に触れることなく、紅蓮の話してくれていた過去の話の続きを聞く事にした。

『なんのことだい?』
『昔話はまだ途中だろう?』
『ほお?なぜそう思う?』
『成果を挙げ続けていたのなら、近接戦闘型ニケがいなくなるはずがない』
『・・・』
『話したくなければ、話さなくてもいい』
『一度話し始めたのだ。最後まで語ろう』

紅蓮は、杯に注がれた酒に映る自分の姿を見ながら続きを語り出した。

『成果を挙げ続けるか・・・そんなはずなかろう。君の言うとおりだ。そうはいかないのが、この世の理だ』

──人生と言うのものは、そう甘くない。

1人の近接戦闘ニケが仲間に対して剣を振った。

『しっかりしろ!君は何を斬ろうとしている?』

紅蓮は正気を失ったニケを止めようとするが、もはやその声は届いていないようだ。

『・・・全部・・・嫌・・・〇す・・・全部・・・嫌・・・〇す・・・全部・・・』
『・・・』
『・・・レン』

薔花は悲しそうな顔で紅蓮の肩に手を置くと、小さく首を横に振った。

『・・・』

紅蓮は力いっぱい奥歯を噛みしめながら、目を瞑った。
隣から薔花の小さく謝る声が聞こえる。

『・・・ごめん。本当にごめんなさい』

──思考転換が起きた仲間を斬ることもあった。

別の作戦。

『爆弾設置、完了』
紅蓮の完了を告げる声が聞こえると、薔花は作戦に参加をしている全員に聞こえるように
『主要拠点の爆弾設置任務、完了!3分後に建物が崩れるわ。みんな外に出て!』
と緊迫した声で伝える。

あとは外に脱出するだけだったが、紅蓮の片足がねじが外れたように動かなくなってしまった。

『・・・』
『レン!なにしてるの?早く脱出を・・・』
『先に行ってくれ』
『何を言ってるの?どうして・・・!』
『片足が・・・動かぬのだ。姉さんは早くいけ・・・!』
『こんな時にボディが・・・!』

悪い事は続くもので、一行を見つけたラプチャーが巨大な銃口を向けた。

キィィン・・・。

ラプチャーが仲間を呼ぶコールシグナルがあたりに響く。

『みんな、逃げて!』

薔花はそう叫ぶと、紅蓮を抱きかかえて前方に向かって走った。
二人が脱出したと同時に爆発が起き建物が崩れ去る。

『みんな、無事・・?』

薔花は慌てて周囲を見回した。
任務に投入されたのは8人。
残ったのは・・・7人だけだった。

任務中にボディが故障し、ラプチャーの攻撃を受けて〇ぬ仲間もいた。

薔花が寂しそうな顔をしながら、静かに医務室の扉を開けて出てきた。
無言だった薔花に最初に声をかけたのは紅蓮だった。

『状態はどうだ?』

その言葉を聞くと薔花は小さく首を横に振った。

『また・・・?』
『うん。ボディが完全に剥がれてる。その衝撃で・・・脳波も正常値以下になってるの。持ち直したとしても、思考転換を起こす確率が高いわ』

そして、少しの間を置いて薔花は小さく呟くように言う。

『・・・その前に、ボディの修復が間に合わず脳が〇んでしまうけど』
『・・・そうか』

紅蓮は一言だけ返すと、自分の片足を見た。

『レンの足はどう?』
『私は平気だ。一部の部品が緩んでいた程度だから自分で修理できたのだ』
『自分で・・・弱いわね、私たち・・・』
『任務に赴くたびに・・・誰かが〇ぬかケガをしているな』
『私たちは他のニケよりボディが軽量化されているから。一発殴られるだけで、すぐケガをするし。近くで戦うから、精神的にも追い詰められて思考転換も多い。そもそも・・・私たちのボディは量産型タイプのボディを無理やり近接型に改良したプロトタイプだから・・・欠陥も多いの』

紅蓮も分かっている事だったが薔花は自分を納得させるために話しているのだなと考え、黙って聞いていた。

『だから修理が頻繁に必要になるのに、ボディの修理どころか・・・明日の食糧さえない状態よ』
『残りは・・・6人か?』
『そう。でも、それも次の支援物資が来た場合の話ね。今回の任務でみんな負傷したわ。ずっと何も食べてないし・・・限界が近い』
『支援物資の知らせはまだなのか?』
『そうね』
『中尉は、任務を遂行しろと言うだけ?』
『・・・そうね』

2人は無言のまま少しの時間を過ごすと
『このままではダメだ。このまま何もせず、皆を〇なせるわけにはいかぬ』
と紅蓮が口を開く。

『私が中尉ともう一度話してみる。事態の深刻さに気づけば、中尉も少しは協力してくれるはずよ』
『私も共に行こう』
『え?一緒に?』
『1人より2人の方が騒々しいであろう?騒ぎ続ければ、煩わしくなり。あの怠け者も、何かをしようとするはずだ』
『ふふ、頼もしい~。じゃあ一緒に行こう。何とかして、話を聞いてもらわなきゃ』

いかにも紅蓮らしい考えだなと思い薔花は少しだけ笑うと、2人で中尉と話し合いの場に向かうのだった。

争いの種 A

『中尉。支援について、何か進展はありませんか?』
『・・・支援か。まだないな。ああ、ない』

2人の会話を聞いていた紅蓮が口を挟む

『ない?のんきに構えている場合か?・・・今この部隊がどのような状態で、皆の様子がどうなっているのか、分かっているのか?部隊には10人しかおらぬ。それなのに4人が〇に、残りはたったの6人だ』

紅蓮の言葉を上の空で聞いていた将校は最後の紅蓮の言葉だけ気になった様子で繰り返した
『なるほど・・・6人か・・・』
『残りの部隊は元気だとでも?6人中2人は腕が壊れ始め、他の2人も剣がボロボロだ。皆、限界まで追い詰められている!』
『!!』
『分かっている?分かっているのに、こうしてのんきに座っているのか?手を打つべきだ。部隊の指揮官なのだろう!?任務中は何もしないにしても、任務外では役に立つべきではないのか?少なくとも指揮官なら!この部隊を率いるものなら!それくらいはすべきであろう!』
『レン。落ち着きなさい』

紅蓮は怒気を含んだ声で将校に言いたかった事や部隊の現状を伝えるが、その言葉は薔花の一言で押さえつけられてしまう。

『あなたの言う通り「指揮官」よ』
『・・・チッ』

紅蓮は悔しそうに舌打ちをし、紅蓮は薔花の後ろに下がった。

『ふぅ・・・お。驚いた。君たちの言いたいことは分かる!だが、腹を立てたところで何も変わらない。支援の件は・・・戦況が悪いからということだから・・・もう少し待ってくれ』

将校が理由を話した後に、薔花は静かな声で疑問の声を上げた。

『本当に戦況のせいなのでしょうか?この間任務であった部隊の子たちは、それなりの支援を受けているようでした』
『・・・』
『むしろ、ここまで何も支援もない部隊の方が珍しいような・・・。違いますか?』
『それは・・・!そいつらは私たちより成果を挙げているのだろう。そ、そうだ。まだ上層部から認められるほどの成果を挙げていないから・・・だから支援が受けられないんだ』
将校の話をきくと、薔花は
『あぁ・・・成果ですか』
と表情のない顔になり、後ろで下がって話を聞いていた紅蓮は怒りで剣をに握る手に力が入った。
『何をふさげたことを・・・!』

2人の感情などお構いなしに将校は話を続ける。
『そこで・・・新しい任務だ』
『また任務ですか?』
薔花は感情のない表情のまま将校を見続け、続く話にもあまり期待していないようだった。

『この任務さえ終われば、私たちにも公式部隊の承認が下りるはずだ!そうすれば、公式に部隊の名前も付くぞ!支援も他の部隊と同じように受けられるはずだ・・・多分な』

最期の小さく「多分な」と言った言葉を聞き逃さなかった紅蓮はその場で愉快そうに笑いだした。
『ははっ、それは実に頼もしい話だな』
『仕方ないだろう?ラプチャーとの戦争中なのだから・・・』
『・・・』
『・・・』
『やるよな?い、いや、やるしかない!そうすれば、気にたちが望む支援を受けられるんだ。そうだ。答えろ。承知したと伝えるからな?』

2人が無言の中、勝手に話を進めてく将校に対し薔花はニッコリと微笑みながら
『・・・ひとまず分かりました。みんなと相談してみます』と返事をした。

その言葉を聞くと満足したかのように将校は
『ああ』と一言返した。

紅蓮はその様子を無言のまま見つめていた。

『・・・』
『レン。行こう』
『・・・分かった』

紅蓮と薔花が部屋を出ようと扉に近づいた時だった。
『おい・・・薔花!』
『はい?』
将校が大きな声で薔花を引きとめ、予想外の出来事で薔花は将校の方を振り返った。
『君だけ・・・残ってくれ』
『私だけですか?』
『ああ』
『・・・分かりました』

紅蓮は『先に戻る』と言い一人で外に出て行き、2人を遮る扉が閉まる音だけが異様に大きく響いた。

争いの種 B

『は・・・反乱だと?反乱を起こそうと言ったのか?』
『うん。そうよ?どう考えても、司令部は私たちに支援するつもりがなさそうだから。このままいけば、全員〇ぬだけよ。怠け者の中尉を脅してでも~支援してもらおうってわけ』

いつものように、おっとり無邪気に話す姉に対して紅蓮は険しい表情で声を荒げる。

『姉さん!』
『うんうん、聞こえてるよ~大声を出さなくても大丈夫』
『中尉から何か聞いたのか?あいつ、姉さんにいったい何を・・・!』
『大した話じゃないよ、愚痴を聞いてあげただけ。いつものやつ』
『それならば、なぜだ?なぜ、急にこのような極端なことを・・・!』
『なんでって・・・。中尉は私たちの意見を聞くつもりもないし、本部は私たちの状況がどれほどひどいのか知らないみたいだから~。少しだけ困らせてあげようかなって。騒ぎ立てれば、うっとおしくなって、何かしてくれるかもしれないから』
『だからって、人間を脅かそうというのか?ラプチャーを倒すために作ったこの剣で・・・人間を?ニケである・・・私たちが?』
『・・・』

2人の間に少しの間沈黙が訪れ、最初に真剣な声で言葉を口にしたのは薔花だったが表情はとても穏やかだった。

『うん。ニケである私たちが。人間を脅かそうって言ってるの。このままじゃ、みんな〇ぬだけだから』
『しかし・・・!』
『今回の任務、見た?』
『・・・ああ』
紅蓮は薔花に任務の話をされると表情を暗くし、話を続けた。
『第5指令部の武器倉庫奪還・・・であったな』
『そうよ。今までとは比べものにならないくらい難しい任務なのに・・・人数は半分。しかも、明日決行。何の準備もできていないのに・・・』

薔花は話を区切り、悲しそうな顔をした。

『このままじゃ、今度こそ全員〇んじゃうかもしれない。そんな任務、できると思う?』
『・・・だからって、人を脅かそうというのか?そもそも、そんな事ができると思うのか?』

真剣な表情をしながら薔花に問う紅蓮だったが、薔花はにこやかに笑う。

『まあ~なんとかなるでしょ』
『軽く言うでない!』
『う~ん、ふざけているように見えた?本気なんだけど』
『姉さん・・・!』

紅蓮は姉、薔花が持つ剣に力が入るのを見逃さず姉が本気である事を悟った。

『みんなにも、1人ずつ聞いてみたの。2人は賛成。2人は反対。レンが反対するなら、半々ってわけね』
『皆・・・もう選択したというのか?』
『だから次はレン。あなたの番よ。レンはどうしたい?』
『・・・』

紅蓮は目の前にいる姉ではなく自分の剣に目を移した。
赤く染まった剣。だが、これは・・・

『・・・』
『やっぱり反対?』

紅蓮は静かに息を吸うと薔花を真っすぐ見て答えた。

『・・・ああ。反対だ』
『みんなを〇地に追いやる任務をやるっていうのね?』
『〇地へ追いやる?いつ私たちがそんなことを恐れた?私たちは、常に〇を前にして任務へ赴き、数多くの困難を乗り越えてきた。フェアリーテールモデルでもないただの量産型ニケに過ぎないが、人類のため・・・人類を守るという誇りを持って!今まで戦いに耐えてきたのだ』

薔花は何も言わずに紅蓮をじっと見ていた。

『だからこそ、部隊の皆は命をかけ、〇を迎えるその瞬間まで戦うことができた!それなのに、今さら〇ぬかもしれないという理由だけで簡単に手放すことなど、できるはずなかろう』
『・・・』
『手放してしまったら、〇んだ仲間たちは・・・彼女たちはな〇死んだ?なぜ命をかけたのだ?』

紅蓮はにも言わない薔花に対しもう一度大きな声で問う

『何のためだ!?』
『・・・レン』
『中尉を脅かし、支援を受けられたとしよう。では、その次は?』
『・・・』
『人類連合軍からは裏切り者として。ラプチャーからは敵として。どこにも心休まる場所はなく、永遠に彷徨い続けることになるだろう。私たちの望みは、そんなものではなかったはずだ!』
『・・・』
『姉さんがいっていたではないか。この世に永遠などない、と。私たちも同じだ。永遠に生きられぬのだとしたら、私は・・・!』

紅蓮は自分が持っている剣に力を込めて握り、続けて話した。

『どのように〇ぬかよりも、どのように生きるかを選ぶ。裏切者の烙印を押され、一生逃げ回るくらいなら、愚かだと言われても、ニケとして・・・!最後の最後まで戦って〇ぬ』

ずっと紅蓮の話を聞いていた薔花が呟くように、紅蓮の言葉を繰り返した。

『・・・〇に方よりも・・・生き方の方が大事・・・・最後まで・・・戦って〇ぬ、か・・・』
『・・・』
『その気持ち、永遠に変わらない?』
『・・・変わらぬようにしてみせる』
『どんな苦難が待っていても?』
『どんな苦難が待っていても』

少しの間二人の間に沈黙が訪れる。

『・・・大人になったね。レン』

薔花は剣に力を込めるのを止め、紅蓮に優しく微笑みながら話しかける。

『最初はラプチャーを怖がって、任務エリアに飛び降りることさえできなかったのに』
『それは、最初の任務だったから・・・!』
『本当に・・・大人になったわ』

薔花は少し寂しそうな顔をしながら、自分の剣をそっと指でそっとなぞった。

『何を言っておるのだ。急に』
『・・・』
『・・・姉さん?』
『ふふ、そっか。そんなに嫌なら・・・仕方ないね。任務決行は明日だから、取り合えず行こう』
『そうか・・・!』
『今回の任務が終わったら・・・その時・・・その時に、また考えましょ』
『ありがとう』
『・・・お礼なんて。みんなは私が説得するから、明日の任務の準備をしてて』
『分かった』

紅蓮は部屋から出ていく姉の姿を静かに見送った。

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