【NIKKE】New year New SworD Episode2
New year New Sword Episode1の続きEpisode2になります(`・ω・´)ゞ
剣を持った姉妹 A
紅蓮には姉『薔花』と言う姉がいた。
紅蓮の首に薔花の剣先が触れると、紅蓮は一瞬びっくりしたような顔をし静かに
『・・・負けを認めよう』
と薔花に降参の言葉を述べた。
『ふあ~今回は焦ったよ。一撃が重くなったね。次は本当に負けちゃうかも?』
『余裕で勝っておいて、よくも嘘をペラペラと』
『いやいや~。余裕なんかじゃなかったよ』
『・・・』
いつも緊張感をもつ紅蓮とは違い、薔花は和やかな様子で話す。
『これで、985戦976勝9引き分けかな?』
『こっそり勝ちを増やすでない。975勝10引き分けだ』
『ふふ、騙されなかったか~』
そう言って、紅蓮に薔花は微笑みかけると紅蓮は小さな溜息をついた。
『でも、私がお姉ちゃんでしょ~?剣くらいは、私の方が上手くないとね?他はなんでもレンの方が上手いでしょ。掃除も、料理も。几帳面なところも~』
紅蓮はその言葉を遮るように話す。
『私たちが作られた目的はなんだ?姉さんも私も剣を使うニケ。ならば、剣術が最も重要であろう?』
『そうかな?いつかレンは私に勝つって思ってるけど。花に十日の紅無し。永遠なんてないでしょ?いつか、レンが私を倒す日もきっと来るはずよ。今じゃないみたいだけどね?』
そう言って薔花は満面の笑みで紅蓮を見る。
『・・・その余裕、いつかへし折ってやろう』
『ふふ、期待してるね』
二人の会話がひと段落したと同時に、ピッとスピーカーから放送が流れる。
「ご案内いたします。館内にいらっしゃる特殊改良量産個体A。近接戦闘型ニケのみなさんは、全員訓練場にお集まりください。繰り返します・・・」
『急に召集だなんて。何かあったのかな・・・?』
隣で不思議そうな顔をしている薔花の顔を紅蓮は見ずに
『さぁ・・・いとまず行こう』
と訓練場に向かうのだった。
訓練場には特殊改良量産個体。近接戦闘型のニケたちが集まっていた。
『全員集まったか?』人類連合軍の将校は薔花に確認をする。
『はい』
薔花が一言返事をし、全員が集まった事を告げる。
『そうか・・・全員いるのだな。ふぅ・・・本当にしなければならないのか?なぜ、よりによって私が・・・。こんなことをしても、ゴッデスになるわけじゃないのに・・・。あの傭兵上りにはフェアリーテールモデルを配属させて・・・なぜ私には・・・』
『・・・?』
独り言を呟く将校を不思議そうな顔で薔花は黙って見ていたが、痺れを切らした紅蓮は
『いつまで立っていればいいのだ?』
と声を上げる。
将校はその声に我に返り大きな咳ばらいをした。
『全員あつまったんだな?今までのテストの結果、君たちは高く評価され近接戦闘部隊と言う名で任務を受け、戦場に出る事になった。し、したがって、近接型として作られた特殊改良量産個体A、近接戦闘型ニケ10名は戦力確保に向けた、潜入および奪還任務を担当する。・・・わ、私と一緒に』
『私たちと一緒に?人間の体で?』
自信がなさそうにそう話した将校に紅蓮は噛みついた。
その後に続き薔花は
『じゃあ、あの~何だっけ。私たちもゴッデス部隊みたいに指揮官がつくんですか?』
『・・・そうだ。ゴッデス部隊例にならい、これからは正式な部隊ではなくても1部隊ごとに指揮官が1人つき働くことになった・・・』
『ゴッデス部隊の功績が思ったより大きいようだな。このようなことがルールになるほどとは』
将校の話を聞き、紅蓮は指揮官がついても何も変わりはしないのに心の中で考えていた。
『何か質問はあるか?そ、そういえば。薔花』
『はい?』
『君が最終テストでトップの成績だったそうだ。部隊のリーダーは君になるだろう』
『わ~、リーダーって成績順だったんですね!びっくりです~』
薔花はいつも通りののほほんとした表情をしているが、感情はこもっていない言い方をした。
『く、くだらんことを。話は以上だ。各自、持ち場に戻れ!明日午前に任務エリアに移動する。か、各自武装の準備を徹底しろ・・・!』
そう言い終えると人類連合軍の将校はあたふたとその場を立ち去った。
『・・・ついに実践か』
重い空気のなか紅蓮は誰よりも先に口を開いた。
『本物のラプチャーを・・・この手で・・・』
そんな紅蓮の姿を薔花は無言で見つめていた。
剣を持った姉妹 B
任務当日
任務エリアへ向かう輸送車の中は静寂に包まれていたが、軍用車のエンジンの音と静かに装備がカタカタと震える音が聞こえている。
『・・・』
『レン?』
『・・・何だ?』
『初めての任務だから緊張する?』
静寂を破ったのは薔花だった。
『・・・まさか。ラプチャーを斬れると思うと、武者震いが止まらないのだ』
『ふ~ん、そっか。レンがそう言うなら、そうなんだろうね』
『・・・』
無言の紅蓮に薔花は続けて話した。
『レン。リリーバイス少佐のこと、知ってるでしょ?』
『ニケでその名を知らぬ者はいないだろう。人類に「ニケ」という存在を知らしめた、最初で最強のニケなのだから』
『だよね?リリーバイス少佐って本当に素敵よね。すごくキレイで、強くて。一般Bチームの子たちから聞いたんだけど、力が強すぎてラプチャーを引き裂いちゃったんだって』
『引き裂いた・・・?ラプチャーを?』
『うん。それも素手で!少佐が投入されるたびに、ラプチャーがポ~ン!ポ~ン!って吹き飛ぶらしいわよ』
『素手での近接戦でそのような成果をあげたから、人類連合軍としても近接戦闘を諦められず。私たちの様な近接戦闘用に改良した量産ニケを作ったというわけだ』
薔花の話を聞き、紅蓮は納得ように答えた。
『そうね。それだけ強いリリーバイス少佐も、初めは緊張したはずよ』
『なぜ姉さんに分かる?』
『何となく?そんな気がするの。誰も敵わなかった存在と向き合って、大切なものを守らないといけないんだから』
『そもそも強い人間なら、緊張などしないのではないか?』
『ふふ、そうかな?私はあの人もニケになる前は人間だったから。私たちと同じように、緊張したんじゃないかな~って思うわ。初めてのことは、誰でも緊張するものよ』
紅蓮は薔花がこんな話をするのを不思議に思い、静かに尋ねた。
『・・・姉さんも緊張しているのか?』
『そりゃ~もちろん。私だって地上のラプチャーと戦ったことはないのよ?実践は初めてだし、緊張するし、怖いわ。でも、この感情も今だけよ。この世に永遠なんてないんだから。この緊張感も、不安も、慣れたら何ともなくなるわよ。今回の任務でそうなるって、私は信じてる』
『姉さん・・・』
紅蓮は薔花に声をかけようとしたが、軍用車が止まり目的地まで着いた事を知らせる。
『着いたみたいね』
『・・・』
静寂の中ザザッと言う無線の音が入り、人類連合軍の将校が任務遂行の命令をする。
『に、任務エリアに到着した!みんな位置につけ!』
『は~い。さっ、それじゃあ~。行こうか』
薔花はいつも通りに返事をし、地上に先頭を切って戦闘車両から降りるのだった。
地上には沢山のラプチャーたちが砂煙を巻き上げながら移動している。
『任務エリア付近の建物に潜入完了およびターゲット確認。地上型ラプチャー20機を肉眼で確認。建物から降下すれば、ただちにラプチャーの群れの中心部に到着できる位置です』
薔花は落ち着いた様子で将校に連絡をする。
『そうか。で、では全部壊してこい!!』
『ラジャー』
ピッと言う機械音がし、将校との会話が終了した事を告げる。
地面を揺らすほどの大きな足音と、感情が読み取れない冷たい機械の目。
テストルームで見たものより、さらに大きく威圧的なその姿に、みんなが息をのんだ。
『・・・』
『・・・』
紅蓮と薔花は何も言わずラプチャーの姿を見ていた。
ラプチャーの魔窟に躊躇なく飛び込める者はいなかった。
『あの中に飛び込んで・・・あれを斬らなきゃいけなんだよね?』
『銃じゃなくて・・・剣で・・・』
何所からとなく、すっかり怯え切った誰かの一言に紅蓮は振り返った。
みんなの心は、不安と緊張で埋め尽くされていた。
紅蓮は、足が重くなったような気がした。
『うーん。私は剣の方が簡単だと思うけど。遠くから銃で撃っても外したら終わりだけど、私たちは違うでしょ?私たちなら少しぐらい手元が狂っても、何かは斬れるはずだから』
そういって、薔花はその場からたちあがった。
『・・・姉さん?』
『それに・・・銃より剣の方が素敵じゃない?』
そう言って、薔花はみんなに笑いかけるとラプチャーの群れの中央へ飛び込んだ。
『姉さん!』
紅蓮は薔花の名前を叫ぶがその声を背に、薔花は降下した先のラプチャーに向かって剣を振りかざすと
ガガガッ・・・と言う機械が崩れる音が聞こえ3、4体のラプチャーが一瞬で崩れた。
一瞬の事で紅蓮はビックリし、倒れたラプチャーの真ん中に立っている薔花を見た。
『う~ん、思ったより大したことないね。レン!こんなことで緊張してるの?こんなのも斬れなくて、どうやって私に勝つつもり~?』
挑発ともとれる薔花の言葉に紅蓮は奥歯を強く噛みしめ、薔花に言い返す。
『・・・緊張などしておらぬ!』
紅蓮はその場から立ち上がり、姉のいる場所に向かった。
紅蓮はラプチャーに剣を振りかざすと、思っていたより滑らかにラプチャーの中に入り込むことを理解した。
幾度にもわたるテストで目にしてきた、敵の動き、視線、コアの位置、意識せずとも本能的に感じられるほどだった。
どこを斬れば、ラプチャーを上手く破壊できるのか?
どうすれば、ラプチャーを無力化できるのか?
──できる・・・
──斬れる!
紅蓮はラプチャーに恐怖を感じなくなっていた。
紅蓮の刃がラプチャーのコアを貫通した。
『大したことないな。だから皆、怯えていないで折りてこい!私が君たちの分まで斬ってしまう前に!』
その力強い叫びが仲間たちに届いたのかどうか、紅蓮は覚えていない。
しかし・・・
初めて立ち向かう恐怖という壁を越え、仲間たちが一歩ずつ前に進みだし、ラプチャーにむかって剣を振りかざした。この事実だけが紅蓮の脳裏に強く焼きついている。
こうして、誰にも期待されていなかった彼女たちの任務は死傷者0人という異例の記録で幕を閉じた。
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