【あくねこ】それが、醒めない夢であって欲しいから【SS 地下編】

こんにわヾ(・ω・*)ゆいなです。今日は『悪魔執事と黒い猫』(あくねこ)のSS。

少し、しんみり悲しい感じで語っていきたいと思います。

何時もの如く、ネガティブ思考に取りつかれやすい人、落ち込んでいる人は回れ右でお願いします(`・ω・´)ゞ

出てくるのは、地下の執事たちです♪

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いつもと変わらない日常だから。

主は何時もの様に屋敷に帰り、眠りに就こうとしていた。

うとうとしていると、目の前の蝋燭がゆらゆらと揺れ形を変え、滲み、ぼやけて影を落とす。

『・・・私って、なんでココにいるんだっけ?』

ふと、そんな事を考える。

寝返りを打つと、ひんやりとした枕の感覚やシーツの感覚が鈍く伝わり、こんな時は意味のない事を考えるものだと主は思っていた。

ふわふわと飛ぶ瑠璃色の蝶、金色の鱗粉、一定の速度で鳴る機械的な音。

じわじわと広がる紅い血液、落ちる雫。銀色の月。

ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・・

今日はやけに機械的な音が耳に付く。
それは、他の誰にも聞こえなくて主自身だけに聞こえる事は分かっていたが、いつもの事だったのでそっと目を閉じ、その音を聞いていた。

──コンコン──

誰かが、自室のドアをノックした。

『主様。おやすみですか?』
『・・・フルーレ・・・?』
『こんな深夜に申し訳ありません。お話したい事があって・・・』
『入って』

主は働かない頭を押さえながらベットから起き上がり、フルーレに話しかけた。

『主様。お休みのところ申し訳ありません・・・』

フルーレは主の様子をみて、申し訳なさそうに視線を逸らした。

『どうしたの?フルーレ』
『・・・主様は・・・』
『?』
『・・・いなくなったりしませんよねっ!?』

そう言ったフルーレは両手をギュッと握り、目に涙を沢山浮かべている。
主は一体何があったのか分からなかったが、フルーレの手を優しく自分の手で包んで、フルーレを安心させようとした。

『・・・ほら。私はフルーレの傍にいるよ?』
『・・・』
『・・・フルーレ?』
『・・・主様は本当は気づいているんじゃないですか?』
『?』
『・・・いえ・・・なんでもありません・・・』

フルーレは主の手をそっと離すと袖で涙を拭ふいて、赤くなった顔で作り笑いをした。

『ねぇ、主様。俺は主様に似合う沢山の洋服を作って、まだまだ、沢山・・・主様に着てもらいたいんです・・・』
『フルーレ・・・』
『だから、ずっとココにいて下さいっ!!』
そう話すと、フルーレの瞳から大粒の涙がポロポロと零れ落ちて、服に小さなシミを作っていく。

『大丈夫だよ。フルーレ』
主はそっとフルーレを抱きしめると、フルーレはビックリしたように動かなくなった。
『あ・・・あるじ・・・さま?』
『私はココにいるよ?』
『こ・・・こんなのっ・・・俺・・・らしくないですよねっ・・・』
『そんな事ないよ』

主は小さな子供をなだめる様にフルーレの髪を撫で、落ち着かせようとするが逆効果になってしまったようで、フルーレは堰を切ったかのように泣き出してしまった。

『主様・・・っ。ごめんなさいっ・・・ごめんなさいっ・・・』
『大丈夫だから・・・』
『でも俺・・・主様に何もしてあげられなくてっ!!』
『沢山してくれてるよ?』
『・・・そんな事ないんです・・・』

銀色の月が空高く昇っていた。
フルーレの泣き声以外は何も聞こえなくて、とても静かな夜だった。

笑顔を守るために

『なんかあったのかい?主様?』
翌朝、主に声をかけてきたのはミヤジだった。

『・・・少し・・・だけ・・・』

フルーレの事を宥めるのに明け方近くかかってしまって、寝不足の主はぼんやりと窓の外を見ていた。

『ねぇ、ミヤジ。フルーレって何かあったの?』

同じ地下の執事で"先生"と呼ばれている彼の事だ。
何か知ってるのではないかと思い、主はミヤジに尋ねてみた。

『ん?フルーレくんかい?』
『何か思い詰めている様子だったから・・・』
『そうか・・・』

ミヤジはバツが悪そうに主から顔を背けると、困ったように腕を組んだ。

『どうしたの?』
『フルーレくんが何か主様に無礼をしたのなら、私から謝罪をするよ。申し訳ない。そして、この話は今は私の口から言えないんだ』
『・・・言えないって、どう言う事?』
『私は主様には、いつも笑っていて欲しいんだ。私は主様の笑顔を守りたいと思う』
『守りたいから言えないって事?』
『そう・・・なってしまうんだろうね・・・申し訳ない』

主は納得できない様子だったが、ミヤジの事だ。
これ以上何を聞いても答えてくれないだろうと思い、主はその場を後にした。

働く蟻、怠け者の蟻。

外に行くと地面にうつ伏せになり、一点をじーっと見ているラトの姿があった。

『ラト。何しているの?』
『蟻さんの巣の観察です』
『蟻の巣・・・』

主はラトが見ている蟻の巣を一緒になって見てみると、蟻が一匹、また一匹と忙しなく出たり入ったりしている。

『ねぇ。主様。昨日のフルーレは壊れていませんでしたか?』

蟻の巣を見ながらラトは主に聞いた。

『壊れていると言うか・・・若干変だったけど・・・ラトは何か知ってるの?』
『そうなんですね。心優しいフルーレなら仕方のない事かもしれません』

ラトは起き上がり、服に付いた泥をポンポンっと払う。

『私のせい・・・?』
主はそんなラトを見ながら訪ねた。
『えぇ。主様のせいでしょうね』
『私、何かしちゃったかな?』

身に覚えのない主だったか、何か悪い事をしてしまったのかと思い表情が暗くなった。

『落ち込まないでください。主様。蟻さんを観察していると分かる事があります。忙しく働く蟻さん、働いたら休む蟻さん、怠ける蟻さんです』
『・・・』

そうして、ラトは自分が見ていた蟻の巣を踏みつけた。

『!?』
『怠ける蟻さんだけを殺したらどうなるか知っていますか?働きアリさんのうちの何匹かが、今度は怠ける蟻さんになります』

ラトは目を細めて低い声で言った。

『誰かが、誰かの役割を担うという事です』
『・・・誰かが・・・役割を・・・』

主は昨日フルーレが言った『いなくなりませんよね?』と泣いて言いたフルーレを思い出していた。

『私がいなくなったら・・・誰かが・・・って・・・事?』
『言い方が悪かったですね』

ラトは蟻の巣から足を離すと、自分の足で下敷きになった蟻を見ながら主に話しかける。

『自分が働く蟻さん、怠け者の蟻さんだと認識して生きている。そんな蟻さんいると思いますか?』
『・・・分からないけど・・・』
『私たちから見れば、蟻さんは蟻さんです。ただ、それだけの事です』

主だけに聞こえていた、規則的なの機械音がピッピッと早くなる。

『主様。屋敷に帰りましょう。考えすぎはよくありませんよ?』

目に見えないモノ。透明な幸せ。

次に主が目を覚ますと、白い天井が視界に入る。
(ここって・・・?)
主は自分の置かれている状況について確認する。

点滴の雫が落ちる音、色んなチューブ、白い包帯。


(現実の世界?)

心電図がピッ、ピッと機械的な音を立てて緑の波形を作っている。
主は腕を動かそうとしたが、力が入らず動かすことも出来なかった。

(どういうこと──?)

主はあの日、現実世界であった事について思い出していた。
仕事が終わって、帰宅して・・・普通の日常だった。
その後は──?

寝ようとして・・・誰かが入ってきて・・・。

私──・・・。

主は声を出そうとしたが、声が出なかった。

(もし・・・みんなの所に帰れるなら・・・ずっと一緒に・・・もぅ、嫌だよ・・・こんなの。痛いし、辛いし・・・なんで私が・・・)

瑠璃色の蝶々が沢山飛んで、金色の粉が舞う。
森には心地いい風が吹いて、馴染みのある景色が見える。

主の手は半透明でその世界のモノを掴もうとすると、すり抜けてしまう。

『・・・』

主は、なんとなく理解していた。自分に残された時間は少ない事を。
そして、自分が作り上げた空想の世界だという事も。

『主様・・・』

地下の執事たちが主の姿を見つけると近くにきて話しかけてきた。

『私、もうみんなに会えないかも・・・』
フルーレが主のその言葉を聞くと、泣き出す。
『あ・・・主様。最後まで俺が守りますからっ!!だからっ・・・』
『フルーレくん・・・』
ミヤジはそんなフルーレの事を抱きしめる。

『なんとなく、分かってた。皆が優しくしてくれる理由とか、天使と戦う理由とか・・・もう、皆が戦わなくて大丈夫だよ』

そう言うと主の手は透明さを増し、今にも消えてしまいそうになる。

『主様は、何も分かっていませんね』

静かに主の話を聞いていたラトは口を開き、自分の腕に武器で傷をつけると主の手を強く握った。

『私たちが繋ぎとめます。ですから、主様は安心してください』
『・・・ラトっ!?』
ラトの温かい血液が今にも消えてしまいそうな主の身体を伝っていく。

『ねぇ?主様。私も一緒に消えてしまったら、それを幸せだと思ってくれますか?』
『──・・・』

優しい風が吹くと、瑠璃色をした蝶が飛び、金色の粉が舞う。
景色とは不釣り合いな紅い血液はラトの腕を伝っていて、主が確かにココにいた事を物語っていた。

ピ───ッ・・・・

悪魔執事と言う執事たち

『むかしむかし、あるところに、悪魔執事と言う13人の執事たちがいました』

暖かな窓際でソファー座りその女性は、小さな子どもに絵本の読み聞かせをしていた。
『ママー?なんで悪魔なの?』
『天使さんから守ってくれるからだよ』

その女性は絵本を閉じ、子どもを抱っこする。
『天使さんは悪い人なの?』
『・・・・んー・・・ママもよく覚えてないんだけどね。昔ママを助けてくれたのが悪魔執事さんだったんだよ』
『そうなんだ!!じゃぁ、ママを助けてくれたお礼を言わないとだねっ♪いつか会えるかなー?』

子どもは手を伸ばすと絵本を手に取りパラパラとめくり、あるページを見つけるとまだ読みなれていない文字を一生懸命読みだす。

『み・・・やじ・・・。フル・・・れ・・・?ら・・・と?でいいの?ママ?』
『うんうん。良く読めたね』
女性は子どもの髪を優しく撫でるとその挿絵にもう一度視線を落とした。

女性はその挿絵の文字を指でなぞる

──ミヤジ・・・フルーレ・・・ラト・・・──

かつて女性を"主様"と呼んでいた執事たちの名前だった。

ただ、今の彼女には物語の登場人物に過ぎない。

『ねぇ。ママ?どうしたの?』
『ううん?何でもないよ?お腹空いたね。ご飯作ろうか?』

立ち上がった女性の首元には金色の指輪の付いたネックレスがあり、キラキラと輝いていた。

おまけ(/ω\)♡

はいヾ(・ω・*)最後まで読んで下さって有難うございました♪
今回は『地下の執事達編』という事でミヤジ』『フルーレ』『ラトという事で書いてみました♪

皆様お気づきでしょうが・・・。
どうも、ハッピーエンドと言うモノが苦手で書けないんですよね(´・ω・`)

自分で書いといてなんですが・・・。
あくねこの絵本とかあったら欲しいな~♪
と思ったり(/ω\)♡

今回のハーフアニバーサリーガチャ・・・。
ラトがこないぃぃぃ!!(ノシ 'ω’)ノシ バンバン
7月7日までの格闘が続く訳です。

ラトこないかなぁ・・・(´・ω・`)

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