【NIKKE】Good World【Part 5】
前回の続きですヾ(・ω・*)
前回のお話はコチラ→【NIKKE】Good World【Part 4】

美しい締めくくりのために:A
「次は何処に向かうんだ?」
病院を後にした指揮官とシラツルは、アークの街を歩いていました。
「ええと…次は…」
シラツルは手帳を取り出し、確認します。
──グゥゥ……
不意に鳴った音に、シラツルと指揮官は顔を見合わせました。
「…今の音は、なんでしょうか?」
シラツルは心配そうに指揮官を見つめます。
「もしかして…おともだちのお腹の音ですか?」
そう言いながら、彼女は指揮官のお腹へ視線を向けました。
「……恥ずかしいから、丁寧に反応しないでくれ」
指揮官は困ったように言います。
「まあまあ…! そうだったんですね〜!そういえば、とっくにお昼も過ぎていますもんね…!」
シラツルは申し訳なさそうな顔で続けました。
「成長期真っ盛りのおともだちをペコペコ状態にさせてしまったなんて… 私ったら、オトナ失格です」 「成長期ではないが…」
指揮官は苦苦笑しながら返します。
「このままじゃいけません」
シラツルは決意したように歩き出しました。
「今すぐお昼ご飯を食べに行きましょう!」
「そこまで急がなくてもいいから落ち着いてくれ。移動しながら軽く食べれば、じゅうぶ──」
「!!」
シラツルは大きく目を見開きます。
「軽く食べるですって…!」
そして、ぐっと指揮官へ近づきました。
「おともだち、それはダメですよ」
突然距離を詰められ、指揮官は目を丸くします。
「食事はきちんと取らないといけません。体を壊してしまいますよ」
そう言って、シラツルは指揮官の手を掴みました。
「今すぐ食事に行きましょう!」
柔らかく微笑む彼女を見て、指揮官は観念したように息を吐きます。
「…分かった、食事に行こう」
「ふふ、いい子ですね。ではさっそく、行きましょう~」
シラツルは嬉しそうに笑いました。
「…」
しかし、二人ともその場から動きません。
「なぜ止まっているんだ?」
指揮官はシラツルに訊ねます。
「えっ?ええと、おともだちが行きたいお店があるのかな~と思いまして…」
シラツルは首を傾げました。
「いや、特にないが…」
「あら、そうなんですか?」
シラツルは困ったように微笑みます。
「でも、そうですよね。おともだちだって、 この辺りのおいしいお店を知らないってこともありますし…。では、ちょっとだけ待っててください」
そう言って、にこりと笑いました。
「この辺りで評判のお店を聞いてきますね~。道端で10人くらいに聞けば、いいお店が見つかるってテレビで言ってました…し?」
勢いよく飛び出そうとしたシラツルを、指揮官は慌てて引き止めます。 その拍子に、髪飾りと耳飾りがふわりと揺れました。
「…その必要はない。私が案内しよう」
指揮官はシラツルを連れ、アークでも人気のハンバーガーショップへ向かうことにしました。
店へ着くと、男性店員の元気な声が響きます。
「Everybody! Cosmo Taste~★いらっしゃいませ~コスモバーガーへようこそ~★ご注文は、タッチパネルでお願いします~」
シラツルは、その言葉にぴくりと反応しました。
「タッチパネル?」
そして、興奮したように指揮官へ話しかけます。
「おともだち! 今の聞きましたか?最近の店員さんは、自分のことをタッチパネルって言うんですね~」
「…ん?」
シラツルの言葉を聞いて、指揮官も不思議そうな顔をします。
「ほら、注文は“タッチパネル”でって言ってたじゃないですか」
シラツルは分かりやすく説明するように微笑みます。
「普通なら、注文はスタッフに、でしょう? ここでは自分のことをタッチパネルと言う決まりがあるみたいですね~」
「いや、そうではなく……」
不思議そうに首を傾げるシラツルを見て、指揮官は何と説明すればいいのか考えます。
指揮官は見せた方が早いと考え、シラツルをタッチパネルの端末の前に連れて行きました。
「画面を押して注文するこの端末のことを、 タッチパネルと言うんだ」
「まあ、これで注文を?」
シラツルは驚いたように端末を見つめました。
「じゃあ、お金はどこで払うんですか?」
指揮官に視線を移して尋ねます。
「注文時に、会計もこれでできる」
「な、なんですって…。そんなことができるんですか?不思議ですねぇ…」
シラツルは、もう一度まじまじとタッチパネルを眺めました。
「ふむふむ…なるほど~ つまり、自動販売機みたいなものってことですね?」
「…まあ、そんな感じだ」
「すごいですね~。店員さんなしで注文ができるなんて。これなら、恥ずかしがり屋さんでも気兼ねなく注文できそうですね」
シラツルは嬉しそうに笑います。
「ふふ、実に不思議です~」
その時、店内の別の席から感嘆の声が聞こえてきました。

「おお…!うまっ!」
シラツルがそちらを見ると、若い女性が男性へ話しかけています。
「それって、新しく出たやつだよね?」
「うん!食べてみるか?」
その光景を見たシラツルは、嬉しそうに指揮官へ微笑みました。
「ふふ。みんな、おいしそうに食べてますね。これがハンバーガーなんですね~ 本物を見るのは初めてですが、おいしそうです」
指揮官は不思議そうに聞き返します。
「食べたことがないのか?」
「ふふ、はい。『地下』にいた時は、 限られたものしか口にできなかったので」
そう言ったあと、シラツルは慌てたように付け加えました。
「…あっ!と言っても、マズいものばかり出されていたわけではないんですが、こういう外の食べ物をいただける機会はありませんでしたから」
その話を聞き、指揮官の表情が曇ります。
「…どこかに閉じ込められていたのか?」
「あら…ふふ、そうではないんです」
シラツルは優しく笑いました。
「えっと…半分は義務で、半分は自分の意思でそこにいました。軽々しく口外できないような、たくさんの契約に関わっていたためです」
そして、どこか遠くを見るような目をします。
「…そういえば、契約を管理する仕事をしていると言っていたな。なら、管理している契約は今回の手紙以外にもあるのか?」
「ええ、そうですね。 他の契約もあり──」
シラツルがゆっくりと指揮官へ視線を向けた、その時でした。
「あの…すみません。注文しないんですか…?なら、先に注文しても…?」
気の弱そうな女性が、おずおずと話しかけてきます。
「まあ、ごめんなさい。注文もしないでおしゃべりに夢中になってしまいました。お先にどうぞ~」
シラツルと指揮官は順番を譲り、そっと指揮官に話しかけます。
「ここはお話しするのに向いてないようですので、 続きはまた今度にしましょうか?」
「ああ、わかった」
「では~…私たちも、 あの新商品にしましょうか?あそこの若いおともだちの反応からして、 きっとおいしいはずです」
シラツルは指揮官に微笑みます。
「そうしよう」
「それじゃ、お店で食べるので~。先に席をとっておきますね」
シラツルが席を探しに行こうとした時、指揮官が呼び止めました。
「…いや」
その言葉に、シラツルは振り返ります。
「外に出よう」
「外ですか?」
「ああ」
美しい締めくくりのために:B
指揮官は二人分のハンバーガーセットを片手に持ち、シラツルと一緒にアークの街へ出ました。
「ここで食べようか?」
指揮官は繁華街の一角にあるベンチへ腰を下ろします。
「ここでですか?」
シラツルは少し意外そうに首を傾げました。
「ああ、気に入らないか?」
「いいえ、ふふ。最近は、こんなところで食べたりするんですね」
シラツルは柔らかく微笑みます。
「新しい経験は、楽しまないとですし~」
そう言って、静かに指揮官の隣へ座りました。
「ぜひここで、一緒に食べましょう」
──カサっ
指揮官は袋からハンバーガーを二つ取り出し、そのうちの一つをシラツルへ渡します。
「……はぁ」
受け取ったシラツルは、小さくため息をつきました。
「……どうしたんだ?急にため息なんかついて」
「お会計の仕方が分からなくて、結局おともだちに払ってもらうなんて……。こんなことなら、テレビでちゃんと予習してくるべきでした……」
シラツルは申し訳なさそうに俯きます。
「なら、今度おごってくれればいい」
「そう……ですか?」
シラツルは静かに指揮官を見つめました。
「……いえ、そうですね!今度は必ず、私がヘルシーでおいしいものをごちそうしますね!」
そう言って、嬉しそうに微笑みます。
「ああ、楽しみにしている」
指揮官がそう返すと、シラツルは満面の笑みを浮かべ、慣れない手つきで包み紙を開きました。
「ふふ。それでは、いただきま~す」
──パクッ
シラツルはハンバーガーを一口頬張ります。
「!!」
その瞬間、驚いたように目を見開きました。
そして感動したように、指揮官を見つめます。
「もぐ……とってもおいしいです!」
「口に合ったようでよかった」
指揮官はそんな彼女の姿を見て、自然と微笑みました。
「これが、今の若い子たちが好きな味なんですね~。ふふ、楽しいです」
「それじゃ、私もいただくとしよう」
「は~い。どうぞ召し上がれ~」
シラツルはハンバーガーを食べながら、行き交う人々をじっと眺めていました。
──笑いながら手をつないで道を渡る、仲むつまじい家族。
──道端に腰かけて休んでいる老人。
──ささいなことで言い争っている商売人たち。
平和な日常を送るさまざまな人々の姿を、その目に焼き付けるように見つめています。
しばらく、二人は無言でいました。
「……本当に好きなんだな」
指揮官が静かに口を開きます。
「はい?」
シラツルは指揮官へ視線を向け、不思議そうな顔をしました。
「人をながめるのが好きなんだろう?」
シラツルは小さく笑います。
「……ふふ、そうですね。 なので、こうして人間観察をしながら食事ができて、嬉し──」
そこまで言いかけて、ふと口を止めました。
「まさか……」
驚いたように指揮官を見つめます。
「人をながめるのが好きそうだからと、外で食べることを提案したんですか……?」
「……まあ、そうだな。それに、天気もよかったから」
「まあ……!」
シラツルは嬉しそうに微笑みました。
「ここまで気遣いができるなんて……。おともだちは、本当に思いやりがある子なんですね~いい子いい子」
ソースの付いていないほうの手で、ぽんぽんと優しく指揮官の肩を叩きます。
「ところで、どうして分かったんですか?」
シラツルは周囲の人々へ視線を移しました。
「人をながめるのが……好きって」
「デパートでも病院でも、ずっと色々な人たちを目で追っていただろう?」
シラツルは何も言わず、静かに微笑みます。
「公園で初めて会った時に、寝ている私にハンカチをかけてくれたのも、子どものぬいぐるみ捜しを手伝ったのも、人々をながめるのが好きだから困っている人に気づいたんじゃないか?」
シラツルは静かに指揮官を見つめました。
「……ええ。その通りです」
そして、くすっと笑います。
「今のアークは昔と比べて変わったところも、そうでないところもたくさんあって、その違いがとても面白くて……ついながめてしまうんです」
「……今まで、『地下』という場所から一度も出たことがなかったのか?」
指揮官は以前から抱いていた疑問を口にしました。
「え~と、あるにはあるんですが、ほとんど仕事ばかりしていたので、プライベートで街を歩くことはありませんでした」
そう言って、少し苦笑します。
「アークに来る前も、研究所で契約関係の教育を受けていましたし、もうそれが、普通になってしまったというか~。こんなふうに、プライベートで目新しいものに触れるのは今日が初めてかもしれません」
その話を聞き、指揮官の表情が曇りました。
「今日が初めて……」
少し間を置き、静かに尋ねます。
「ニケになる前の記憶も……ないのか?」
「はい」
シラツルは穏やかに微笑みながら答えました。
「私は『契約』という、特殊な業務を遂行するために作られたニケでしたから。なので、テトラTVの番組を見たり、財団と契約したおともだちが毎年送ってくれる、手紙を読むのが好きだったんです」
シラツルの髪飾りが、ふわりと揺れます。 耳飾りも、アークの光を受けてほのかに輝いていました。
「そういったものに触れるたびに、私が経験したことのない世界が……。アークが、息づいているように感じられたので」
シラツルはもう一度、人々へ視線を向けます。
「……他の契約に比べて、この契約に思い入れがあるのはそのせいかもしれませんね」
「……そうだったのか」
少し間を置いてから、指揮官は静かに尋ねました。
「寂しくはないのか?」
シラツルは不思議そうに首を傾げます。
「何がですか?」
「思い入れのある契約が終わることが」
「……そうですね」
シラツルは呟くように静かに答えました。
「もちろん、毎年届いていた手紙が来なくなるのは残念ですし、寂しいですよ」
「でも……」
シラツルは穏やかに笑みを浮かべます。
「あの子たちが問題なく契約を終えて、無事に契約の終了を告げられただけで、とても嬉しいので」
そう言うと、少し寂しそうに俯きました。
「実を言うと、何事もなく契約の終了をお知らせできるのは当たり前のことじゃないんです」
「……そうなのか?」
「はい。先ほど、サラの話の中で……」
シラツルは静かな声で続けます。
「財団に所属していたたくさんの子どもたちが、援助の内容に満足できず、財団のお金を奪おうとして私から制裁を受けた……。そう言っていたのを、覚えていますか?」
「……ああ、覚えている」
「……当初、財団に所属していた子どもたちは100人を超えていました」
シラツルは静かに指揮官を見つめました。
「ですがこうして、無事に契約を終えた子はたったの3人しかいません」
「!!と言う事は……」
「ええ。それ以外の子どもたちは、契約が終わる前に病気や事故で命を落としたり、あるいは、私から制裁を受けた……ということです」
柔らかな風が吹き、シラツルの髪が揺れました。
彼女はその髪を押さえることなく、遠くを見つめています。
「その”制裁”というのは……?」
「文字通り、契約に違反した場合、契約を守るよう制裁を加えることです」
シラツルはゆっくりと指揮官へ視線を戻しました。
「まず初めは、言い聞かせます。言い聞かせてもダメなら、警告を」
「それでも是正が見られなければ……」
「力づくで」
シラツルはそっと目を閉じます。
「!!」
指揮官は驚いたように目を見開きました。
「契約を見届ける者として、このようなケースには何度も遭遇してきました。最後まで契約を全うできた子は、数えるほどしかいません」
「でも……」
そこまで言うと、シラツルは柔らかく微笑みました。

「今回の契約では、無事に終えられる子が3人もいました。だから、嬉しいんです」
「私にアークの様子を知らせてくれた子たちと、お互いの顔を見て、今までの苦労をねぎらいながら……有終の美を飾ることができるんですから」
指揮官は、そんなシラツルを静かに見つめます。
「そうだったのか……」
「だから、おともだちには感謝しています。この素敵な締めくくりを手助けしてくださったことも、新しい経験に戸惑う私を導いてくださったことも。おともだちは、本当にいい人です」
「いや……私は……」
指揮官は顔をそむけました。
(君に聞きたいことがあるから、手伝っただけだ)
「……」
指揮官は何も言わず、シラツルを見つめます。
「……?」
シラツルは不思議そうに首を傾げました。
「それで、最後の手紙はどこに届けるんだ?」
「あ、はい!え~と、レオがいる場所は~……ここですね」
シラツルは何事もなかったかのように手帳を取り出し、指揮官へ住所を見せます。
「……ここからそう遠くないな」
「あら、ちょうどよかったです~」
「よし、さっそく届けに行こう」
指揮官は優しく言いました。
「この契約を美しく締めくくるために」
「ふふ、そうしましょう~!」
シラツルは満面の笑みを浮かべます。
「あっ。残りのハンバーガーも、よ~くかんで食べましょうね~?そしたら、もうひと頑張り、最後のおともだちに会いにいきましょう~!」
そして最後に呟くように言葉を続けました。
「……美しい締めくくりのために」
──しかし、
指揮官とシラツルの話は、思いもよらぬ形で結末を迎えることになりました。











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