【NIKKE】Good World【Part 4】

2026年7月2日

前回の続きですヾ(・ω・*)
前回のお話はコチラ→【NIKKE】Good World【Part 3】

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二通目の手紙

カフェを後にした指揮官とシラツルは、二通目の手紙の受取人に会うため、アーク市内の病院へ向かっていました。

「わあっ…おともだちのおかげで、病院にも迷わずに来られました~!ふふ、本当に頼もしいですね~」

シラツルは、嬉しそうに指揮官へ微笑みかけます。

「その…2通目の手紙の受取人は、 ここの患者なのか?」

指揮官は不思議そうに尋ねました。

「はい。受取人のオリバーは 1年前から入院しているそうです」

笑顔を浮かべるシラツルとは対照的に、指揮官はどこか複雑そうな表情を浮かべます。

「そうか…」

すると、シラツルは何かを考えるように小さく唸りました。

「う~ん」

指揮官は静かに彼女へ視線を向けます。

「ところで、おともだち」
「ん?」
「さっきから、どうして気まずそうなんですか?」

シラツルは不思議そうに首を傾げながら尋ねました。

「目も合わせてくれませんし。初めは、そんなことなかったのに~」

指揮官は少し気まずそうに答えます。

「その…先ほどの話から、 シラツルの年齢がだいたい分かった気がして…」

指揮官は俯き、口ごもりました。

「このままタメ口で話してもいいのかと…」

「ええっ…!」

シラツルは驚いたように声を上げます。
しかしすぐに、理由が分かったことに安心したように微笑みました。

「そんなことを気にしてたんですね~。あらあら、なんてかわいいんでしょう~」

微笑んでいるシラツルとは対照に指揮官は、少し申し訳なさそうにシラツルを見ました。

「気にして当然だろう?」

そう言って、視線を逸らしたまま続けました。

「アーク封鎖時代から生きている人が、 先生と呼んでいたのだから」

シラツルは静かに笑います。

「ふふ。先生というのは、ただ財団の子たちがそう呼んでいるだけで…。当の私は、年齢なんて気にしてませんから~」

そして、もう一度優しく言いました。

「なので今まで通り、気楽に接してくださいね。むしろ、遠慮せずに 接してくれたほうが嬉しいです」

「…分かった。なら、遠慮しな──」

その瞬間、緊急サイレンが廊下に鳴り響きます。

「急患です!どいてください!」

男性救急隊員の切迫した声が響きました。

切迫した声を聞いて、シラツルと指揮官は慌てて邪魔にならない様に後ろに下がります。

──ガラガラガラ…

運ばれてきたストレッチャーには、手足のパーツを失ったニケが横たわっていました。 その後ろを、二人の量産型ニケが必死に追いかけています。

「リーダー!しっかりして!」

深刻な表情のニケが、ストレッチャーの上の仲間へ叫びました。

「ううっ…このままいなくなるなんてダメですっ…!」

もう一人のニケも涙ぐみながら、必死について走っています。

その光景を見送りながら、指揮官は静かに呟きました。

「事故があったようだな…」

「…そうみたいですね」

シラツルは心配そうな表情のまま、小さく答えます。

そして、ゆっくりと院内を見回しました。

──暗い表情で座っている病衣を着た人や、 その隣で静かに手を握る人。 怯えた表情で順番を待っている人。 苦痛に顔を歪めながら座っている人──

その場にいる人々は誰もが顔に不安を浮かべていました。

シラツルは何も言わず、その光景を見つめています。

「大丈夫か?」

指揮官は心配そうに声をかけました。

「もちろんです~。こういう光景を目にするのは、 初めてではありませんから」

シラツルは笑顔で返します。

けれど、その笑みはどこかぎこちないものでした。

「ただ…」

そう言って、少しだけ寂しそうに目を伏せます。

「…エターナルライフが開発されてからは、 人間の寿命は、以前とは比べものにならないほど延びました。それに比例して、医療技術も発展の一途をたどっています」

そこまで言うと、シラツルは小さく言葉を切りました。

「それなのに、今も人間は…。そしてニケたちは…予期せぬ病気や事故に遭い、 悲しみや苦しみを抱えている。長い年月が流れたというのに、それは今も変わらないと思うと…」

シラツルは、再び病院内を静かに見渡します。

「…少し、悲しいですね」

そう呟くと、一度静かに目を閉じました。

「…」

指揮官は何も言わず、そんな彼女を見つめています。

やがてシラツルは、ゆっくりと目を開きました。

「ふふ、ごめんなさい。暗い雰囲気にしてしまいましたね」

話を切り替えるように、柔らかく微笑みます。

「そういえば面会を申請してから、だいぶ経ちましたけど…まだ呼ばれませんね~」

「そうだな、ちょっと聞いて──」

指揮官が動こうとした、その時でした。

「オリバーさんの面会申請をされた方ですか?」

女性看護師が淡々と確認します。

「はい、そうです~」

シラツルは微笑んで答えました。

「こちらへどうぞ」

看護師に案内され、病室の中に入ると…

そこには──

「!!」

指揮官は目を見開きます。

──ビービービービー…

いくつもの機械やチューブに繋がれ、 命をつなぎ止めている高齢男性─オリバーがいました。

しかしシラツルは、そんな彼にも変わらぬ笑顔を向けます。

「会えて嬉しいです。オリバー。シラツルと申します」
「ああ…いらっしゃいましたか…先生。お待ちして…おりました…」

途切れ途切れの言葉を紡ぎながら、オリバーはかすかに微笑みました。

「健康な姿で…お会いできたら…よかったのですが。申し訳…ありません。」

「とんでもないです。こうして待っていてくださっただけで、十分ですよ」

オリバーは何かを悟ったように尋ねます。

「契約の終わりを…知らせに?」

「はい」

シラツルは静かに微笑みました。

「契約が終了したので…」

そう言って、一通の手紙を取り出します。

「契約者様が残したこの『手紙』を 直接届けに来ました」

シラツルはそっと、オリバーへ手紙を差し出しました。

「あの方が…手紙を…」

オリバーは点滴の刺さった腕を上げ、 ゆっくりと手紙を受け取りました。

手紙を開くと室内には紙を開く小さな音がします。

「……」

それから彼は、何も言わずにじっくりと内容を読み続けます。

指揮官とシラツルは、その様子を静かに見守っていました。

やがてオリバーは、丁寧に手紙を折りたたみ、布団の上へ置きます。

「しかと…拝読いたしました」

シワだらけの手を、ゆっくりと見つめながら呟きました。

「あの方は…結局、 会いに…来られないのですね」

「…はい」

シラツルは静かに答えます。

「その理由も…私どもには…教えてくださらないのですか?」

オリバーはシラツルを見つめました。

「はい」

シラツルは、もう一度、静かに頷きます。

「そうですか…残念ですね…」

オリバーは彼女を責めることなく、どこか遠くを見るような目をしていました。

そんな彼へ、シラツルは静かに言います。

「…では、契約終了の手続きを進めますね」

「オリバー」

名前を呼ぶと、彼女の髪飾りがさらりと揺れました。

「契約に従い、最後に一つ質問をいたします」
「あなたから見て、アークは前よりもいい場所になりましたか?」

オリバーは遠くを見ていた視線を、ゆっくりシラツルへ戻します。

「前よりもいい場所…ですか…」

彼は点滴の刺さった腕へ静かに視線を落としました。

「…ええ。私は…良くなったと、思いますよ」

その言葉を聞いて、指揮官は大きく目を開きます。

「かつては私も…アークは不合理で…。理不尽な場所だと思っておりましたが…」

手元の手紙に指先が触れ、かさりと小さな音を立てました。

「年を取り…病を患ってからというもの…。少しずつ考えが…変わっていったのです」

オリバーはゆっくりと、シラツルと指揮官を見つめます。

「地上で…ラプチャーどもに…家族を皆奪われた、この私が…。新しい家庭を築き…生き抜いてこれたのも…」

「一人の人間として…。これほどの長い人生を歩むことが…できたのも…。財団を始め…アークに生きる人々のおかげだと…」

そこまで話すと、オリバーは深く息を吐きました。

「病に伏す今も… そう思っています」

「たくさんの人々の助けと… 献身的な子どもたちのおかげで、こうして先生のお顔を拝見し… 契約を締めくくることができました」

「ですから…こんなにも優しい人々が住むアークは…。間違いなく…前よりもいい場所になったと、 思っております」

シラツルは、彼の言葉を書き留め終えると、静かに筆を止めて微笑みました。

「ご意見、感謝いたします」

そして、そっと手帳を閉じます。

「お話しするのもつらかったでしょうに、 ご丁寧にありがとうございました」

オリバーは小さく首を振りました。

「何てことはありません… これは、私がお話しすべきことでしたから」

そして、少しだけ微笑みます。

「これ以上、病が悪化する前に… 契約を終わらせられて…よかったです…」

「これで…未練なく旅立つことが…できそうです」

静かな病室に、途切れ途切れの声が優しく響きました。

指揮官とシラツルは、静かに目を伏せます。

やがてシラツルは顔を上げ、オリバーへ穏やかに微笑みました。

「今までお疲れさまでした、オリバー」

すると、オリバーは少し躊躇うように口を開きます。

「あの…先生」

シラツルは不思議そうに首を傾げました。

「最後に…頼みごとをひとつ…聞いてはいただけませんか?」

「もちろんです」

シラツルは、暖かな笑みを向けます。

「もし…先生が、あの方にお会いになる機会がありましたら…」

オリバーは少し間を置いてから、静かに言いました。

「人としての人生を与えてくださって… ありがとうございますと…。どうか…お伝え願えますでしょうか?」

「…はい、必ずお伝えいたしますね。」

そう言ってシラツルが微笑むと、耳飾りと髪飾りが揺れ、病室の明かりを柔らかく反射しました。

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