【NIKKE】Good World【Part 4】
前回の続きですヾ(・ω・*)
前回のお話はコチラ→【NIKKE】Good World【Part 3】

二通目の手紙
カフェを後にした指揮官とシラツルは、二通目の手紙の受取人に会うため、アーク市内の病院へ向かっていました。
「わあっ…おともだちのおかげで、病院にも迷わずに来られました~!ふふ、本当に頼もしいですね~」
シラツルは、嬉しそうに指揮官へ微笑みかけます。
「その…2通目の手紙の受取人は、 ここの患者なのか?」
指揮官は不思議そうに尋ねました。
「はい。受取人のオリバーは 1年前から入院しているそうです」
笑顔を浮かべるシラツルとは対照的に、指揮官はどこか複雑そうな表情を浮かべます。
「そうか…」
すると、シラツルは何かを考えるように小さく唸りました。
「う~ん」
指揮官は静かに彼女へ視線を向けます。
「ところで、おともだち」
「ん?」
「さっきから、どうして気まずそうなんですか?」
シラツルは不思議そうに首を傾げながら尋ねました。
「目も合わせてくれませんし。初めは、そんなことなかったのに~」
指揮官は少し気まずそうに答えます。
「その…先ほどの話から、 シラツルの年齢がだいたい分かった気がして…」
指揮官は俯き、口ごもりました。
「このままタメ口で話してもいいのかと…」
「ええっ…!」
シラツルは驚いたように声を上げます。
しかしすぐに、理由が分かったことに安心したように微笑みました。
「そんなことを気にしてたんですね~。あらあら、なんてかわいいんでしょう~」
微笑んでいるシラツルとは対照に指揮官は、少し申し訳なさそうにシラツルを見ました。
「気にして当然だろう?」
そう言って、視線を逸らしたまま続けました。
「アーク封鎖時代から生きている人が、 先生と呼んでいたのだから」
シラツルは静かに笑います。
「ふふ。先生というのは、ただ財団の子たちがそう呼んでいるだけで…。当の私は、年齢なんて気にしてませんから~」
そして、もう一度優しく言いました。
「なので今まで通り、気楽に接してくださいね。むしろ、遠慮せずに 接してくれたほうが嬉しいです」
「…分かった。なら、遠慮しな──」
その瞬間、緊急サイレンが廊下に鳴り響きます。
「急患です!どいてください!」
男性救急隊員の切迫した声が響きました。
切迫した声を聞いて、シラツルと指揮官は慌てて邪魔にならない様に後ろに下がります。
──ガラガラガラ…
運ばれてきたストレッチャーには、手足のパーツを失ったニケが横たわっていました。 その後ろを、二人の量産型ニケが必死に追いかけています。
「リーダー!しっかりして!」
深刻な表情のニケが、ストレッチャーの上の仲間へ叫びました。
「ううっ…このままいなくなるなんてダメですっ…!」
もう一人のニケも涙ぐみながら、必死について走っています。
その光景を見送りながら、指揮官は静かに呟きました。
「事故があったようだな…」
「…そうみたいですね」
シラツルは心配そうな表情のまま、小さく答えます。
そして、ゆっくりと院内を見回しました。
──暗い表情で座っている病衣を着た人や、 その隣で静かに手を握る人。 怯えた表情で順番を待っている人。 苦痛に顔を歪めながら座っている人──
その場にいる人々は誰もが顔に不安を浮かべていました。
シラツルは何も言わず、その光景を見つめています。
「大丈夫か?」
指揮官は心配そうに声をかけました。
「もちろんです~。こういう光景を目にするのは、 初めてではありませんから」
シラツルは笑顔で返します。
けれど、その笑みはどこかぎこちないものでした。
「ただ…」
そう言って、少しだけ寂しそうに目を伏せます。
「…エターナルライフが開発されてからは、 人間の寿命は、以前とは比べものにならないほど延びました。それに比例して、医療技術も発展の一途をたどっています」
そこまで言うと、シラツルは小さく言葉を切りました。
「それなのに、今も人間は…。そしてニケたちは…予期せぬ病気や事故に遭い、 悲しみや苦しみを抱えている。長い年月が流れたというのに、それは今も変わらないと思うと…」
シラツルは、再び病院内を静かに見渡します。

「…少し、悲しいですね」
そう呟くと、一度静かに目を閉じました。
「…」
指揮官は何も言わず、そんな彼女を見つめています。
やがてシラツルは、ゆっくりと目を開きました。
「ふふ、ごめんなさい。暗い雰囲気にしてしまいましたね」
話を切り替えるように、柔らかく微笑みます。
「そういえば面会を申請してから、だいぶ経ちましたけど…まだ呼ばれませんね~」
「そうだな、ちょっと聞いて──」
指揮官が動こうとした、その時でした。
「オリバーさんの面会申請をされた方ですか?」
女性看護師が淡々と確認します。
「はい、そうです~」
シラツルは微笑んで答えました。
「こちらへどうぞ」
看護師に案内され、病室の中に入ると…
そこには──

「!!」
指揮官は目を見開きます。
──ビービービービー…
いくつもの機械やチューブに繋がれ、 命をつなぎ止めている高齢男性─オリバーがいました。
しかしシラツルは、そんな彼にも変わらぬ笑顔を向けます。
「会えて嬉しいです。オリバー。シラツルと申します」
「ああ…いらっしゃいましたか…先生。お待ちして…おりました…」
途切れ途切れの言葉を紡ぎながら、オリバーはかすかに微笑みました。
「健康な姿で…お会いできたら…よかったのですが。申し訳…ありません。」
「とんでもないです。こうして待っていてくださっただけで、十分ですよ」
オリバーは何かを悟ったように尋ねます。
「契約の終わりを…知らせに?」
「はい」
シラツルは静かに微笑みました。
「契約が終了したので…」
そう言って、一通の手紙を取り出します。
「契約者様が残したこの『手紙』を 直接届けに来ました」
シラツルはそっと、オリバーへ手紙を差し出しました。
「あの方が…手紙を…」
オリバーは点滴の刺さった腕を上げ、 ゆっくりと手紙を受け取りました。
手紙を開くと室内には紙を開く小さな音がします。
「……」
それから彼は、何も言わずにじっくりと内容を読み続けます。
指揮官とシラツルは、その様子を静かに見守っていました。
やがてオリバーは、丁寧に手紙を折りたたみ、布団の上へ置きます。
「しかと…拝読いたしました」
シワだらけの手を、ゆっくりと見つめながら呟きました。
「あの方は…結局、 会いに…来られないのですね」
「…はい」
シラツルは静かに答えます。
「その理由も…私どもには…教えてくださらないのですか?」
オリバーはシラツルを見つめました。
「はい」
シラツルは、もう一度、静かに頷きます。
「そうですか…残念ですね…」
オリバーは彼女を責めることなく、どこか遠くを見るような目をしていました。
そんな彼へ、シラツルは静かに言います。
「…では、契約終了の手続きを進めますね」
「オリバー」
名前を呼ぶと、彼女の髪飾りがさらりと揺れました。
「契約に従い、最後に一つ質問をいたします」
「あなたから見て、アークは前よりもいい場所になりましたか?」
オリバーは遠くを見ていた視線を、ゆっくりシラツルへ戻します。
「前よりもいい場所…ですか…」
彼は点滴の刺さった腕へ静かに視線を落としました。
「…ええ。私は…良くなったと、思いますよ」
その言葉を聞いて、指揮官は大きく目を開きます。
「かつては私も…アークは不合理で…。理不尽な場所だと思っておりましたが…」
手元の手紙に指先が触れ、かさりと小さな音を立てました。
「年を取り…病を患ってからというもの…。少しずつ考えが…変わっていったのです」
オリバーはゆっくりと、シラツルと指揮官を見つめます。
「地上で…ラプチャーどもに…家族を皆奪われた、この私が…。新しい家庭を築き…生き抜いてこれたのも…」
「一人の人間として…。これほどの長い人生を歩むことが…できたのも…。財団を始め…アークに生きる人々のおかげだと…」
そこまで話すと、オリバーは深く息を吐きました。
「病に伏す今も… そう思っています」
「たくさんの人々の助けと… 献身的な子どもたちのおかげで、こうして先生のお顔を拝見し… 契約を締めくくることができました」
「ですから…こんなにも優しい人々が住むアークは…。間違いなく…前よりもいい場所になったと、 思っております」
シラツルは、彼の言葉を書き留め終えると、静かに筆を止めて微笑みました。
「ご意見、感謝いたします」
そして、そっと手帳を閉じます。
「お話しするのもつらかったでしょうに、 ご丁寧にありがとうございました」
オリバーは小さく首を振りました。
「何てことはありません… これは、私がお話しすべきことでしたから」
そして、少しだけ微笑みます。
「これ以上、病が悪化する前に… 契約を終わらせられて…よかったです…」
「これで…未練なく旅立つことが…できそうです」
静かな病室に、途切れ途切れの声が優しく響きました。
指揮官とシラツルは、静かに目を伏せます。
やがてシラツルは顔を上げ、オリバーへ穏やかに微笑みました。
「今までお疲れさまでした、オリバー」
すると、オリバーは少し躊躇うように口を開きます。
「あの…先生」
シラツルは不思議そうに首を傾げました。
「最後に…頼みごとをひとつ…聞いてはいただけませんか?」
「もちろんです」
シラツルは、暖かな笑みを向けます。
「もし…先生が、あの方にお会いになる機会がありましたら…」
オリバーは少し間を置いてから、静かに言いました。
「人としての人生を与えてくださって… ありがとうございますと…。どうか…お伝え願えますでしょうか?」
「…はい、必ずお伝えいたしますね。」
そう言ってシラツルが微笑むと、耳飾りと髪飾りが揺れ、病室の明かりを柔らかく反射しました。











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