【NIKKE】Good World【Part 6】

2026年7月16日

前回の続きですヾ(・ω・*)
前回はコチラ→【NIKKE】Good World【Part 5】

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最後の手紙:A

アークはいつの間にか夜になっており、星空が見えない曇った空をしています。

シラツルと指揮官は夜のアーク市内に一緒に立っており、二人は浮かない顔をして、一言も話をしていませんでした。

「……」

指揮官は静かに確認するように聞きます。 周りはとても静かで、指揮官とシラツルの足音しか聞こえませんでした。

「……5段目か?」
「……そのはずです」

二人は静かに足を止めます。

「ここのようだな」
「……ええ、そうですね」

シラツルは静かに答えます。

シラツルはゆっくりと顔を上げました。

そこには、朗らかに笑う老人の写真と──

「……レオ」

その隣に置かれた、”レオ”と書かれた骨壺が目に入りました。
指揮官は何も言わずにシラツルに寄り添います。

──1時間前

「こんにちは。あの……レオさんですか?」

シラツルは微笑んで話しかけます。

「いえ、それは私の父ですが、どちら様で……」

男性は驚いた顔をしてシラツルに尋ねます。

「あらまあ、そうだったんですね!こんなに素敵な息子さんがいらっしゃったんですね!」

彼女はびっくりした顔をしつつも、柔らかく微笑みます。

「初めまして、シラツルと申します。財団との契約終了をお伝えに参りました」

男性はシラツルを静かに見つめて口を開きました。

「あなたが……シラツル先生……?」
「あら、私をご存じなんですか?」

シラツルは少しびっくりした顔をします。

「……はい。父がずっと、待っていましたから」
「まあ~、そうだったんですね。もっと早く会いに来ればよかったです」

そう言ってシラツルは男性に微笑みます。

「ところで、レオはどこに……」

シラツルは微笑みを絶やさないまま男性に尋ねました。

「父は……」

男性は言いにくそうに言葉を区切り、静かに答えました。

「先週、亡くなりました」

指揮官とシラツルは驚いて目を見開きました。

「そんな……1ヶ月前まで連絡が取れていたのに……。どうして……」

小さな声で呟くシラツルに対して、男性は静かに説明します。

「エターナルライフを打っていない期間が長かったせいなのか、老衰のため、急に容態が悪化して……」
「そう……でしたか」

シラツルは寂しそうに俯きます。

「もう少しだけ早く来ていただければよかったんですが……」
「父は……あなたが来る日をずっと待ち望んでいたんです。支援者様のことが何か分かるかもしれないと……」

男性は父親が話していたことを思い出すかのように、シラツルに話を伝えました。

「ああ……」

シラツルは静かに悲しみの声をもらし、手紙の入ったカバンをぎゅっと握りしめました。

「ごめんなさい。私が……もっと早く来ていれば……」
「……」

そこにいる誰もが口を開かず、少しの時間が流れました。

「……心より、お悔やみ申し上げます。では、私たちはこれで……」 「シラツル、待ってくれ」

その時、その場を去ろうとするシラツルを指揮官が止めました。

「え……」

シラツルの俯いていた顔が指揮官を見ました。 そして、指揮官は静かに男性にお願いをします。

「もし失礼でなければ、納骨堂の場所を教えていただけませんか?」

──そして、現在。

「……やっと、お会いできましたね」

シラツルは静かに話しかけながら、骨壺の横に白い造花をそっと供えました。

「……先ほどは、納骨堂の場所を聞いてくれてありがとうございました」

シラツルは骨壺を静かに見つめたままです。

「実は……レオのことを聞いた瞬間、頭が真っ白になって……何も考えられなかったので」

シラツルは無理をして指揮官に視線を移し、微笑みます。

「こういうことは初めてではないですが……いまだに慣れませんね」 「無理もないだろう」

指揮官は骨壺を見ながら答えます。

「手紙だけのやり取りだとしても、古くからの知り合いには違いないのだから」

そう言うと、シラツルの方にゆっくりと視線を向けました。

「そう……その通りですね」

シラツルは寂しそうに微笑みます。

「長い間、手紙で言葉を交わしてきた……大切なおともだちでした。毎年、毎年……同じ日の朝に着くように、手紙を送ってくれていたんです」

「今年の最後の手紙まで、一度も遅れたことはなくて……」

「とても……誠実な子でした」

シラツルはレオとの手紙のやり取りの思い出を紡ぐかのように、ゆっくり静かに話します。

「ずっと……そういう子だったんです。それなのに、すべてを終える前に……旅立ってしまったんですね」

「私がもう少し、早く来ていれば……。レオがずっと待ち望んでいた、契約者様の手紙を届けられたのに……」

指揮官とシラツルが立つ場所には冷たい風が吹いて、白い造花をそっと揺らしました。

「……結局、渡せませんでしたね」

シラツルはそう言って静かに口を閉じました。

「手紙は置いていかないのか?」

指揮官は静かに尋ねます。

「ええ、持って帰ります」

シラツルは手紙の入ったカバンを少しだけ強く握りました。

「……もう、この手紙を受け取る人はいませんので」

シラツルのその声は、どこか諦めたような、これ以上悲しまないように自分を制しているかのようなものでした。

「……」

指揮官はシラツルにある提案をしました。

「シラツルが読んであげたらどうだ?」

「はい?」

シラツルは驚いたように指揮官を見つめます。

「今、ここで読んであげるんだ」

静かにシラツルに言います。

「そうすることで、契約終了の手続きが完了するのだろう?」

「それはそうですが……」

シラツルは指揮官の提案に少し固まっています。 シラツルにとって前例がないことだったからです。

「……確かに彼は、すでにこの世を去ってしまったが」

指揮官はシラツルに向けて優しく言います。

「契約のために今まで尽くしてきたという事実は、決して消えたりしない。……だからこそ、手紙を代読して契約を終わらせてあげよう」

「でも……レオの耳に届かないのは同じですし……」

シラツルは力なく静かに答えました。

「だが、何もせず締めくくるのとは違うだろう?」
「締め……くくる」

指揮官の言葉を静かに反芻し、朗らかに笑うレオの写真を見つめました。

「……そうですね」

シラツルはそっと手紙が入っていたバッグを持つ手を緩めました。

「何事も、締めくくりが大事ですから。……素敵なアドバイスを、ありがとうございます」

そう言ってシラツルは静かに指揮官に微笑みました。

「……頑張れ」

指揮官は励ますかのようにそっと声をかけます。
シラツルは短く息を整えてから、彼に届けるはずだった手紙を見つめました。

「契約者、レオ」

その声は今までのシラツルとは違い、威厳と温かみがあるものでした。

「思いもよらない形でお会いすることになりましたが、契約期間中、誠実に責務を果たしたため、契約の証人である私、シラツルの判断により、財団の契約者レオは、確かに契約を完遂したと見なし、契約者様の代理としてお預かりした手紙を代読するという形で、契約終了の手続きを行います」

──カサッ

宣言後、シラツルは静かにレオに渡すはずだった手紙を開きました。

──……「愛しい我が子、レオへ」

こうして手紙を書くのは、君が初めて財団を訪れた時と、成人して養護施設を出た時。

そして、これが3度目となるな。

元気にしていたかね?

この手紙を受け取ったということは、数十年という長い月日の間、財団との約束を誠実に守り続けてくれたということだろう。

君のその献身に、まずは拍手を送ろう。

家族を亡くし、慣れない環境に置かれ、厳しい状況だったにもかかわらず、 希望を失うことなく、正直に生きてきた君の勇気と決意に敬意を表す。

そして、この言葉を実際に会って伝えることができず、心から申し訳なく思う。

私も君と同じように、誠実に誰かとの約束を守り続けているがゆえのことだと、どうか理解し、許してほしい。

あの幼かった君たちが、どのように成長したのかこの目で確かめることができず、非常に残念だ。

さぞや、立派な大人になったことだろう。

それだけは、確信している。

契約が終わり、これから財団は君とともに人生を歩むことはないが、 君のそばには、きっと新しく出会った大切な家族がいるはずだ。

だから、レオ。

どれだけの時が君の前に残されているのかは分からないが、 これまで君が誠実に生きて積み重ねてきた日々のように、 これからも君の人生の軌跡が、その終わりの瞬間まで輝き続けることを心から願っている。

これからも遠くから、いつまでも君を応援している。

──「君の永遠の支援者より」

シラツルは手紙を折りたたむと、柔らかく笑うレオの写真の隣にそっと置きました。

「以上をもちまして、財団とのすべての契約が終了したことを宣言いたします」

そしていつものシラツルの声に戻り、悲しみと寂しさを堪えた顔をします。

「……レオ。今まで送ってくださった手紙、楽しく読ませてもらっていました」

シラツルはそっと目を閉じます。

「あなたの手紙のおかげで……地下にいても、アークの景色を感じることができました」

彼女の目から一筋の涙がこぼれました。

「できることなら……会って、あなたの顔を見ながら……」
「感謝の言葉を……伝えたかったです」

一度出てしまった涙は止まることを知らないかのように、次々とあふれてきました。

「今まで本当に……お疲れ様でした」

シラツルは、静かに眠る『レオ』に向かって、深く一礼しました。
その隣で、指揮官もまた深く一礼し、契約を誠実に果たした彼へ静かに黙祷を捧げたのでした。

最後の手紙:B

「ふぅ……ここのベンチでひと休みしましょうか?」
「ああ」

シラツルと指揮官は静かにベンチに並んで座りました。
すっかり遅い時間になってしまったせいか昼間とは違い、公園には二人しかいませんでした。

アークの街灯や建物には優しい光が灯っていました。

シラツルは微笑んで指揮官を見ながら話します。

「おともだち、今日は本当にお疲れ様でした。おかげで、レオともきちんと契約を終えられました」

「シラツルこそ、お疲れ様」

「もう~、とんでもない。全部、道案内をしてくださったおともだちのおかげです。今日一日、付き合ってくれてありがとうございました」

シラツルは静かに頭を下げました。

「こちらこそ。私も忘れられない経験になった」
「ふふ。おともだちにとっても、有意義な経験になったのなら嬉しいです」

シラツルは顔を上げると満面の笑みで微笑みます。

「さてと」

彼女は指揮官の方に座り直して優しく言います。

「これですべて終わったことですし『約束』通り、おともだちの望みを聞いてあげますね!」

「……そうだったな」

嬉しそうなシラツルとは違い、指揮官は少し複雑そうな顔をして手を少し強く握りました。

「ささっ、何でもどうぞ。私にできることなら、何でもしますよ〜!」
「……いくつか、聞きたいことがあるんだが。正直に答えてくれるか?」

その言葉を聞くとシラツルは、不思議そうに首を傾げます。

「質問に答える……?それが私に『望むこと』なんですか?」
「ああ、私にとって大事なことなんだ」
「まあ……いったいどんなことでしょう……?」

シラツルは指揮官を見ると微笑みます。

「……頼む」

指揮官は切実そうにシラツルに頼みました。 そんな指揮官を見て、シラツルは少しの間黙り込み、真剣な表情になりました。

「う~ん……その雰囲気からして、軽い質問じゃなさそうですね」

シラツルはゆっくり優しく指揮官に話しかけます。

「分かりました。何でも聞いてください」
「ありがとう」
「ただし、契約に関する秘密については答えられませんので……。そこは、ご理解ください」
「もちろんだ。もし言えないなら、そう答えてくれて構わない」
「ええ、そうしますね」

シラツルの髪飾りが風を受けてゆらゆらと揺れ、アークの光を優しく反射していました。

「その代わり、秘密でないことなら正直に答えると約束しますね」
「ふぅ……ありがとう」

指揮官はゆっくり息をはき、真剣な表情でシラツルを見ます。

「では、さっそくだが……」
「あっ、その前に」

指揮官が話そうとするとシラツルが先に言葉を口にしました。

「すこ~しだけ、頭を下げてもらえますか?」
「ん?頭を?」
「ええ、ほんのちょっとだけ~」
「あ、ああ……分かった」

指揮官はぎこちなく頭を下げると、シラツルはゆっくりと片手を上げ──

「は~い、なでなで~」

指揮官の頭を優しくなではじめました。

「!!!」

指揮官は突然のシラツルの行動にびっくりして目を見開きました。

「おともだちったら、どうしてこんなに緊張してるんでしょう~?ほ~ら、大丈夫ですよ〜」
「緊張してなど……」

シラツルは優しくゆっくりなで続けます。

「ふふ。緊張する必要も、怖がる必要もありませんよ。何にでもお答えしますので」

そして、静かに優しい声で続けます。

「たとえ、私が答えられない重大な秘密について聞かれたとしも……。絶対におともだちを脅したり、恨んだりしません」

「誓います」

シラツルの言った通り、無意識のうちに緊張していたらしい指揮官は…… その手のぬくもりによって、肩の力が徐々に抜けていきました。

「よしよ~し、その調子です。では、大きく深呼吸もしてみましょうか~?」
「……ふぅ」
「うんうん、いい子ですね~。そうやって緊張をほぐしてから、落ち着いて考えをまとめてみましょう」

シラツルは指揮官を優しい眼差しで見つめながら言います。

「緊張したままで話してしまうと、本当に聞きたかった大事なことを忘れてしまうかもしれないでしょう?」

「時間がかかっても大丈夫なので、たくさん質問していただいていいですよ~。だから、遠慮せず聞いてください」

指揮官は緊張が解けて、頭の中が澄み渡っていく心地がしました。

「……ありがとう。もう大丈夫だ」
「ふふ、そうですか?分かりました~」

その言葉を聞くと、シラツルは優しくゆっくりなでている手を下ろしました。

パチパチパチ──

シラツルは手を叩きます。

「それでは、楽しい質問タイムを始めましょうか~?」
「本当に平気だから、もうリラックスさせようとしなくて大丈夫だ」

指揮官はそんなシラツルを見て苦笑いします。

「あら、これは緊張をほぐすためじゃありませんよ~」

シラツルは悪戯っぽく微笑みます。

「雰囲気作りのためです」

そして、指揮官に問いかけます。

「さて、1つ目の質問は何でしょう~?」
「初めて君と、公園で会った時に『あの幼かった子が立派に育って嬉しい』……と言っていたのは覚えているか?」

指揮官は静かにシラツルを見つめます。

「う~ん、そうでしたっけ?」
「つまり……」

微笑むシラツルを見ながら指揮官は言葉を続けました。

「シラツルは、私の幼少期を知っているということか?」
「ああ~!それを聞きたかったんですね?」

シラツルは驚いたように声をあげました。

「……そうだ。私が知らない過去の私を知っている人物が現われたと思ったんだ」
「まあ、ごめんなさい。聞きたくてウズウズしていたでしょう?」

シラツルは申し訳なさそうに指揮官を見ます。

「おともだちの予想通り、知っています」

二人の間を少しだけ冷たい風が吹き抜けました。

「正確には、おともだちの名前だけをですけどね」
「なぜ知っていたんだ?」
「契約に関する資料で見たんです。おともだちの出生に関する記録を」
「それは、特殊なプロジェクトで生まれたという記録か?」

真剣に聞いていたシラツルの表情が、驚きで少し崩れました。

「!!その時のことを覚えているんですか?」
「いや、ほとんど覚えていない」
「前に一瞬、ある場面を思い出したことがあるだけだ」
「……そうでしたか」

シラツルはその言葉を聞いて少しだけ曇った表情をします。

「おともだちの推測は当たっています。あるプロジェクトで生まれた子だと」
「そのプロジェクトの名は……”プロジェクトA.D.”だな?」
「!!その通りです……。どうしてそれを……おともだちが……」

シラツルは少し困惑した表情で指揮官を見ていました。

「なら……」

指揮官は少し間をあけてシラツルに尋ねました。

「”プロジェクトA.D.”について聞いてもいいか?」
「プロジェクトA.D.についてですか……?」
「全部じゃなくて構わない。どんな実験で、何を研究していたのか、少しのヒントだけでもいい」

指揮官は焦るようにシラツルへ問いかけます。
そんな指揮官を見てシラツルは少しの間、黙っていました。

「自分が何のために、どんな存在として生まれたのか知りたいんだ」 「……おともだち」

シラツルは静かに指揮官に話しかけます。

「答えられないか?」
「……少しお待ちください。その質問に答えても問題ないかどうか、私が結んでいる契約内容を思い出してみますね」

シラツルは静かにまぶたを閉じました。

まるで頭の中で契約内容を確認するかのように。
環境の静けさの中、ほどなくして、再び目を開きました。

「……完全に……契約に抵触してしまいますね」

彼女は申し訳なさそうに指揮官を見ます。

「つまり……?」
「ごめんなさい。プロジェクトの内容を説明することは、明らかな契約違反だとしか答えられません」

シラツルは静かに目を伏せました。

「このプロジェクトは、アーク内でもごく一部の方しか知らない……。機密中の機密なんです」
「……そうか」

指揮官は、うなだれるようにベンチに身体を預けました。

「その代わり」

シラツルは言葉を続けました。

「納得のいく答えにはならないかもしれませんが、このプロジェクトがなぜ誕生したのかなら、ある程度はお話しできます」
「!!」

指揮官は驚いたように目を見開き、シラツルを見つめました。

「それでもよろしいですか?」
「どんなことでも構わない。ぜひ聞かせてくれ」

指揮官のその返事を聞くとシラツルは微笑みます。

「分かりました。はるか昔の……契約のお話です」

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