【NIKKE】New year New SworD Episode4
紅蓮の過去イベのラストのお話になりますヾ(・ω・*)
前回のお話は
・Episode1(一年最後の夜→月明りの下の出会い)
・Episode2(剣を持った姉妹)
・Episode3(バラ色の未来を描きながら→争いの種)
となります。
満開の赤い花のように A
紅蓮は部屋の小さな窓を開けた。
冬の冷たい風が部屋に吹き込み、紅蓮の長い髪を揺らした。
──あと2回夜が過ぎれば、新しい年が始まる。
そうすれば、大切に取っておいた酒を取り出し、皆でのむことになるだろう──
紅蓮はなぜあの苦い液体を人が好むのか、飲みたがるのか理解できなかったが、姉と一緒に飲んだあの時のように皆との思い出が作れるはずだとそうすれば、限界まで追い詰められた仲間たちの心が、少しでも癒されるのではないかと考えた。
──あと2日・・・たった2日、過ぎさえすれば・・・──
冷たい風が頬を撫で指先も冷たくなるのを感じ、紅蓮はゆっくりと窓を閉た。
そして、明日の任務に向け無理やりにでも眠りにつこうとした。
『レン・・・めんね』
『姉さん?』
薔花の声が扉の向こうから微かに聞こえ、次に聞こえたものは切羽詰まった扉を叩く音だった。
『!?』
『紅れ・・・!起きて!今・・・薔花が・・・中尉を・・・カハッ!』
『!!』
ただ事ではないと悟った紅蓮は扉を開け外の様子を確認すると、既に廊下はひどい状態だった。
『紅・・・蓮・・・』
血まみれになり、倒れているニケが紅蓮に手をのばす。
その周りにはその状況を黙って見つめている2人のニケがいた。
紅蓮は倒れているニケに近寄り、手を握り2人のニケを睨む。
『君たちが、なぜ・・・?』
知らないはずがない、紅蓮にとっては3人とも部隊の仲間たちだったのだから。
倒れているニケ場所を離れて2人に話を聞こうとすると、倒れていたニケが紅蓮の足をつかんだ。
『薔花を・・・止めないと・・・中尉を・・・〇しに・・・!』
『え・・・?』
耳を疑うような言葉に紅蓮は目を見開き、放心した状態になる。
『早く・・・!』
倒れているニケが紅蓮に早く行くように伝え、これは悪夢ではなく現実である事を理解させる。
『分かった!』
紅蓮は姉の後を追うとするが、その瞬間仲間たちの剣が紅蓮に向けられていた。
『どいてくれ!』
返事はなく絶対に退くつもりはないと言わんばかりに、ただ一点迷いのない剣が紅蓮に向けられている。
その様子をみて紅蓮は奥歯を強く噛みしめる。
『そちらがその気なら、斬らせてもらう!』
紅蓮は剣を抜いた。
満開の赤い花のように B
──数時間前──
静まり返った廊下に薔花の足音だけが響く。
『・・・』
薔薇花は足を止めると、指揮官との会話を思い出した。
『・・・』
呼び止めた将校は何も言わず、薔花が先に尋ねた。
『何か私にお話があったのでは?えっと、言いにくい内容でしたら、無理におっしゃらなくても・・・』
『どれだけ!生き残るつもりだ?』
突然大声を上げ睨みつけた将校に対し、薔花は怪訝そうな顔をする。
『はい?』
『こ、今回の任務でどれだけ生き残るのかと聞いている』
やっと将校の言いたかった事を理解した薔花は笑顔になり問いに答えた。
『わあ、中尉は私たちには全く興味がないのかと思っていました』
『ふ、ふざけていないでちゃんと答えろ。どれだけ・・・生き残りそうだ?』
『・・・先ほど申し上げた通り、状況は最悪です。任務に参加できる者は6人しかいないのに、そのうちの半分はすでに限界に達しています。そして今回の任務は、今までとは比べものにならないほど難しい任務です。しかし、だからとって大人しく〇ぬわけにはいきませんよね?』
薔花は仲間の事、妹である紅蓮と共に生き残りみんなで歓喜し手を取り合う未来を想像し自然と笑みがこぼれた。
『何とかして、全員生き残らないと』
『全員?』
『はい。断言はできませんが、でも何とか・・・』
『ははっ。全員・・・。ふふ・・・全員・・・全員だと?』
『中尉?』
将校は突然笑い始め同じ言葉を繰り返し、困惑した薔花に対し罵声を浴びせた。
『何が全員だ!!』
机をたたく音が部屋に響き渡る。
『・・・中尉』
『ははっ!そうだな。そう言うと思っていたよ。どうせ1人を除いて全員〇ぬのに、最善を尽くすだの何だの・・・!』
『今、何とおっしゃいました?』
中尉の言葉で大きく目を見開いた薔花は将校にもう一度訪ねた。
『一人を除いて、全員〇ぬ?誰がですか?私たちが?』
『・・・』
『私たちが、全員〇ぬとおっしゃったのですか?まさか・・・だから補給品がこないのですか?』
『・・・』
『中尉!』
薔花の話を聞き、初めは気まずそうにしていた将校だったが、開き直った様子で小さく舌打ちをし真実を語り始めた。
『・・・知るか!そうだ、全員〇ぬんだ!だから支援が受けられないんだ。分かったか?君たちがいくら任務を成功させ続けても、最後の1人になるまで支援などない!』
『なぜですか?私たちが・・・量産型ニケだから?』
薔花は今まで将校に対し怒りをあらわにしなかったが、この時だけは違っていた。
『あはは!いっそ平凡な量産型ならまだマシだったろうにな。近接型ニケだの何だの・・・。プロトタイプは所詮プロトタイプ。それをマネようとしたせいで、こんなことになったんじゃないか!』
『私たちは成果を挙げましたよね。このままいけば、実用性があるって・・・正式部隊に慣れるかもしれないって、あの時・・・!』
次第に大きくなる薔花の声は、将校の声でかき消されてしまう。
『だから何だって言うんだ?非効率極まりないのに。戦闘にでるたびにどこか壊れているじゃないか。思考転換率が高い?ラプチャーを間近で見るから、精神的な崩壊も早いのだろう?維持費がかかるものを、量産する必要などない。いっそ特殊個体を1体作った方がマシだ』
『維持費が高い・・・?特殊個体1体・・・?』
怒りに満ちていた顔は何かに気づいたように、次第に軽蔑した表情に変わった。
『まさか、1人だけ残して、新しいフェアリーテールタイプのニケを作るおつもりですか?』
『・・・そうだ。残った一人はフェアリーテールボディになる。そのために残されるんだ』
『だからどんどん難しい任務が与えられていたのですね。一番長く生き残る者を・・・選別するために』
『・・・話が早いな』
薔花は何かを決心したかのように、将校を鋭い目て見ながら話す。
『・・・今回の任務、私たちは行きません』
『何だと?』
『そうすれば最後の1人が現れることもないから、みんなで生き残れますよね?』
『何を言っているんだ?そんな事が許されるわけないだろう?』
『私たちがやらないと言っているのです。何がいけないのですか?』
『に、任務を拒否する量産ニケだと?そんなもの生きていられると思うのか?思考転換だと判断されるはずだ』
『!!』
その言葉を聞いた薔花は驚いて目を大きく見開くと、それ以上は何も言わなかった。
『ぜ、全員処分されたいのなら、好きにするがいい!まぁ・・・それでも最高の1人を選ぶ必要がある。今までのデータを基にするなりして、1人は生き残るだろうな』
『・・・』
『だから変な事は考えるな。どうせ君が一番強いんだ!大人しく、1人で生き残ればいいだろう?妹のためか?こんな時代に、家族なんて何の意味もない。ただのライバルだろう?』
薔花は寂しそうな顔をすると、将校の話を聞きながら呟く様な小さな声で
『ライバル・・・』
と言った。
『もう終わりにしよう。いったい私が何をしたって言うんだ?君たちの指揮官になれば、良い所で一生安全に暮らせると言うから来てやったのに!私は戦場には住みたくない!これ以上無駄に長引かせるな!』
『・・・』
『よく聞け。君が生き残りたいなら、全員〇せ。君たちはそのために作られた部隊で、終わり方はもう決まっているんだ』
『だから全員生き残るだの何だの、ふざけたことを言うのはやめろ。早くこの戦場での生活を終わらせてくれ!君も早く終わりにしたいだろう?支援を受けたいと言っていたじゃないか。うまい飯を食べて、休みたいだろう?そろそろ片付けて、戻ろう』
『なぁ?そうすればお互いに幸せじゃないか。幸せなのは私たちだけだと思うか?あいつらも、どうせ逝くなら苦しまずに逝く方が楽だろう?』
『・・・』
将校が話している間、薔花は虚ろな顔をして考えていた。
最後の1人になったところで、無事に生き残れるのだろうか?
そもそも、彼らは私たちに「永遠」を与えるつもりはなかった
最後の1人だけが生き残り、花開いたとしても、綺麗な器にその精髄だけを植え替えようとするのではないか?
今までの戦闘でボロボロになった心と体を元に戻す方法はないはずだ。
それなら、万全な状態の適合者に私たちが手に入れた力と経験を与えたいと思うだろう。
そうなると、残った1人でさえ隅々まで吸い尽くされ、残るのはデータのみ。
成功すればするほど、
彼らの好奇心を満たせば満たすほど、
苦しみは増し、それに耐えて死ぬだけだ。
それが、彼らの定めた私たちの「終わり」であるはずだから。
『・・・そうですね。その通りです。永遠なんてありません』
成功が〇の原因なら、「失敗」すれば生き残れる。
彼らの期待を裏切るような・・・
最も「完璧な失敗」のためには・・・何をすればいいのだろうか?
『君もそう思うだろう?よく決心したな。私たちだけでも生き残るべきだ!』
『・・・』
その瞬間、薔花の中で無数の天秤が動いた。
そして、彼女は決めた。
何を守り
何を捨てるか
──
『・・・』
薔花は扉の前に立ち、ノックをする。
『中尉。薔花です。少々お時間よろしいですか?折り入ってご相談があります』
紅蓮は姉を止めるために走った。
いくら速く走ってもニケは呼吸が苦しくなることはないが、なぜかこの時は紅蓮は息が詰まりそうな気がした。
不安な心が、焦る気持ちが、何度も胸を押しつぶした。
──もし・・・姉さんが一線を越えてしまったら
──止められないところまでいってしまったら、その時はどうすればいいのだろう?
『頼む・・・姉さん・・・!』
しかし、辿り着いたその場所には薔花が一人で立っていた。
壁も天井も崩れ、辺り一面真っ赤に染まった場所で。
『!!』
『待ってたよ。』
紅蓮は薔花をの姿を見つけると、大きく目を見開いた。
──薔花が「人間」の血を付け立っていた。
花無十日紅 A
紅蓮は周囲を見回すと、そこには倒れている指揮官と仲間たちの姿がみえた。
『すべて・・・姉さんがやったのか?』
『思ったより早かったね。止めてくれる子たちがいたから、もう少しかかるかと思ったのに』
『答えてくれ!』
目を疑いたくなるような光景に紅蓮の声は強くなるが、いつもと同じ様子の薔花何事もなかったかのようにそこに立っていた。
『うん。私が斬ったの。中尉も、この子も』
『どうして・・・!思考転換でも起きたのか・・・?』
薔花は手に握っていた赤い布を軽く上げて見せた
『う~ん、これで目隠して、ラプチャーだ~って思って斬ったらちゃんと斬れたよ?』
『そんな事が可能なのか?』
薔花は赤い布を下ろし、いつものように微笑みながら話しだした。
『うん、不思議でしょ?私たちは人間を斬れないって規約があるから、人間じゃないって思うように自分に暗示をかけたらどうかなって思ったんだけど、上手くいっちゃった』
『・・・』
『ちょうど私たちの服にも赤いところがあるでしょ?それを見ながら目を隠せば、ラプチャーのコアだって錯覚できるし。強く思いをこめれば、周りで動くものがラプチャーって思えるかもしれないって。思い通りになって、私も驚いたけどね』
そう言って薔花は、地面に倒れているかつての仲間を見て寂しそうに俯いた。
『いったい、どうして・・・』
『それから、この子は・・・目隠しするから、分からないって言っておいたのに・・・。中尉以外の人を斬るつもりはなかったの。残念なことになったわ』
『どうして!』
なかなか理由を話さない薔花に対し紅蓮は苛立ち、声が大きくなる。
『どうして姉さんが・・・こんなことをしたのだ?どうして!』
『・・・』
『分かったと言っていたではないか。ひとまず任務をすると。私の意見を聞くと・・・そういっていたではないか!』
『うん。そうだったね』
薔花は紅蓮に顔を向け、いつもの様子で淡々と話した。
『・・・花に十日の紅無し。この世に、永遠なんてないから』
『!!』
紅蓮は前に薔花と話したことを瞬間的に思い出した。
──「その気持ち、永遠に変わらない?」
──「・・・変わらぬようにしてみせる」
──「どんな苦難がまっていても?」
──「どんな苦難が待っていても」
『あの時、結局私は・・・姉さんを説得できなかったのか』
その後二人の間に少しの沈黙が続き、先に言葉を発したのは薔花だった。
『悔しい?』
『・・・』
『それなら、証明してよ。人類を守りながら生きるという、その気持ちは永遠に変わらないという、レンの言葉を』
『!!』
地上の冬の冷たい風が吹き、2人の髪が同じ方向になびく。
『目の前に、人類の裏切者がいるでしょ?ラプチャーを斬るための剣で・・・。仲間を斬り、人間を斬ってしまった──。人類の敵が』
『私に・・・姉さんを斬れというのか?』
『・・・』
『・・・できないといったら?』
『じゃあ、仕方ないね。私もこれだけは譲れないから・・・。レンが終わらせてくれるまで、これで目隠しをして斬らなきゃ。それがラプチャーだろうと・・・人間だろうと・・・。そうすれば、レンの剣は迷いなくこの首をねらうでしょう?』
そう言って、薔花は赤い布を持ち上げ目に巻こうとする。
『・・・残酷だな・・・本当に・・・私に・・・悪いとは思わないのか?』
紅蓮は怒りと悲しみに満ちた表情でその様子を見ていた。
『・・・ごめんね。でも、分かってほしい。昔から決めていたの。私の最期は・・・レンと剣を交えて終わりたいって』
人間を斬ったニケ
仲間を斬ったニケ
人類を捨てた裏切り者
残酷な・・・
──『紅蓮、だよね?』
──『いかにも』
──『え?う~ん・・・私の妹って元からこんなお年寄りみたいな話し方だったけ?』
──『生まれたばかりのニケに言うセリフではなかろう』
──『う~~ん、こんな話し方じゃなかったと思うんだけど~。ニケになって変ったのかな?』
──『分からぬ』
──『それと、ニケになる過程で大人になりたいと思ったとか?』
──『分からぬと言ったであろう』
──『何も分かんない?私の・・・ことも?』
──『私の姉だ』
紅蓮はニケになった日の話を思い出し、目の前にいる姉に剣を抜いた。
『・・・1つ約束してくれ。この剣に迷いはない。だから絶対に・・・手を抜かぬと』
『・・・うん。分かった』
薔花はニケになって再開した日のような、満面の笑みを浮かべた。
薔花と紅蓮が向かい合い、剣を構える。
『参るぞ』
『・・・来なさい』
花無十日紅 B
2人の剣がぶつかり合う音があたりに響く。
985回。2人が手合わせをした回数だ。
そのため薔花は紅蓮の剣を、紅蓮は薔花の剣をお互いによく知っていた。
相手が今、どれだけ真剣に挑んでいるのか・・・
『わあ~本当に余裕ぶってる場合じゃなさそうね』
『行ったであろう。いつか・・・その余裕、へし折ってやると!』
いつも通りにこやかな顔で話す薔花に対し、紅蓮はそう答えると薔花の剣に狙いを定めて払いのけた。
ビュンッ──
それは一瞬の出来事だった。
『!!』
薔花の剣が上に傾いた一瞬の隙に、紅蓮の剣が薔花のコアに突きつけられた。
──一歩
──あと一歩踏み込めば
──ボディの中心を貫き、コアに届く
──人類の裏切者を
──信頼を裏切った仲間を
──部隊を捨てたリーダーを
──嘘と笑顔で人を欺いた・・・
たった一人しかいない、私の・・・・
姉さんを・・・?
薔花のコアに剣を突き付け動かない紅蓮の腕を薔花は力強く握った。
『!!』
『ふふ、優しいレン・・・』
そして、引き寄せると薔花の中から『グシャッ』音がし、紅蓮の剣が薔花のコアを貫いた事を意味していた。
『あ・・・ああ・・・!』
紅蓮は言葉にならない声をあげ、崩れていく薔花を抱きかかえた。
『姉さん・・・!』
『レン・・・強くなりなさい』
薔花は紅蓮を抱き寄せたると掠れた声で紅蓮に話しかける。
『誰にも・・・振り回せれない様に・・・』
『分かった、分かったから・・・!』
『レン・・・。一人に・・・しちゃって・・・ごめん・・ね・・・』
『・・・うっ。うっ・・・ううっ・・・!』
薔花の最期の言葉をきくと、紅蓮も薔花の事を抱き寄せた。
『逝かないでくれ・・・頼む・・・』
その後紅蓮の口から語られた事は、人類連合軍が近接戦闘部隊の状況を知ったのはすっかり時が流れた後だった事。
当時、戦況はどんどん悪化をしており最初は任務失敗により全員〇んだと思われていた影響も大きかった事。
また、ニケが人間を〇せるということを、絶対に知られてはいけないと判断したのだろうと続けた。
『ラプチャーに向けるべき剣がお互いに向けられて、絶望に飲み込まれ、彼女らの命を斬らせたのだ』
『・・・』
『調査されるべきものが調査され、回収すべきものがすべて回収された後、私はそこに残された。そこに残り、姉さんの剣「花無十日紅」を握ったまま、姉さんと仲間たちをこの手で埋めた』
そう言うと話す事がひと段落したと言わんばかりに紅蓮は酒を飲み干した。
『・・・』
『姉さんがなぜあんなことをしたのか、他の部隊に合流してから聞いたのだよ』
『そして、知ったのだ。姉さんが何を捨てて、何を守ったのか』
指揮官は無言で紅蓮の話を聞いていたが、静かに
『恨んでいないのか?』
と紅蓮に聞いた。
『誰のことをだい?』
『・・・誰でも』
『さあ~』
そう言って紅蓮はまた、杯に酒をゆっくりと注いだ。
『・・・これだけ時間が過ぎると、悲しみも、恨みも、歳月に揉まれ、消えていくのだ。ある意味、姉さんの言葉が正しかったのかもしれぬ。この気持ちでさえ、永遠ではなかったのだから』
『・・・』
『ほほう~ぼっちゃん。気を落とさせてしまったようだな。顔をあげて、あそこを見ておくれ。日が昇ってきたぞ』
『!!』
紅蓮が指し示した方をみると、地平線が赤く染まり、新しい年を象徴する太陽が、空の上に浮かんでいた。
『美しいであろう?空が赤く染まっていく様が・・・華やかに咲き誇る花のようではではないか』
『・・・そうだな』
『・・・ぼっちゃん。姉さんが言っていた通り、この世に永遠などない。1年が終わり新しい年が始まるように、時間は流れ世界は変化していくのだ。流れていく今という時間を、大切に生きていくべきではないかね?』
『言いたいことは分かった』
『うむ。そういうわけで!新しい年を迎えながら、酒でも飲もうぞ』
紅蓮は嬉しそうに杯を持ち上げた。
『まだ私たちが赤く咲いていることに感謝をこめて!』
紅蓮と指揮官は杯を交わした。
『クゥ~。どうだい?新年最初の酒は?』
『・・・苦い』
『はははっ。まるで、人生のようだな』
大好きな姉さんへ
指揮官と別れた紅蓮は一人で地上を探索していた。
──今日、まいていた種から芽が出た。
『ほう・・・。これほど寒いのに、よくぞ生き残った』
凍てつく寒さの中で、屈せず育つ姿が誇らしく、その溢れる生命力に感心したのだ。
『負けずに、すくすくと育つのだぞ』
新年は、他の者と一緒に過ごした。
毎年試していたが、開けられなかったあの酒をついに開けることができたのだ。
みんなと一緒に飲むはずだった、あの酒を
『・・・』
紅蓮は空っぽになった酒瓶を持ち上げた
カラカラッ・・・
100年近く熟成させたせいか・・・
今は酒を嗜むようになったというのにそれでも苦すぎた。
久しぶりに、初めて姉さんと飲んだあの時を思い出したほどだ。
一人だったなら、苦すぎて諦めていただろうが、苦い酒を共に飲んでくれる者がいたから最後まで飲めたのだ。
こんな時代に生きているのが信じられないほど、ぼっちゃんは実にいい人だ。
『う~ん、ぼっちゃんの事を考えていたら、また会いたくなってしまったぞ。そのうちまたいい
酒を持って、遊びに行かねば』
午後には、久しぶりに修行をしに外に出た。
そこで・・・
『バラ?』
姉さんが好きだったあの花を見つけた。
『あれだけ探しても見つからなかったのに・・・。こんな所に咲いていたのか。朝に見た新芽も
そうだが・・・。寒さに負けず、よく生きているものだ』
その薔薇を見たら、ふと姉さんが恋しくなった。
ドサッ
紅蓮は近くの平な岩に腰掛けた。
『・・・』
あぁ、そういえば・・・。
花無十日紅は私が大切に使っているよ。
スッ
紅蓮は花無十日紅を抜いた。
私の剣、「百日紅」の刃の半分が姉さんのボディと一緒に、回収されてしまって地上で生き残る
には、姉さんの剣を使う以外に方法がなかったのだ。
剣もボロボロで、長くは持たぬだろうと思っていたがその後に出会った仲間の中に、腕のいい武
器職人がいて姉さんのコアの欠片で刃を補強し、より丈夫な剣にしてくれたのだ。
『・・・』
姉さんは、永遠など無いと言っていたが、あれほど長い時間が過ぎたのに、いまだにこの剣を見
るたび、姉さんの事を思い出す。
こんな風に、いつまでも忘れずに生きていれば・・・
いつか再会する日が来ても、姉さんを姉さんと呼べるのではなかろうか。
もしその時が来たら・・・
紅蓮は2つの杯を地面に置き、静かに酒を注いだ。
その時は、もう一度「レン」と呼んでくれるかい?
二つある杯の一つに手を伸ばし、静かに酒を口に含むと紅蓮は昔の事を思い出した。
手元にあった剣に手を伸ばすと過去の自分と重ね合わせる。
『仲間』と『剣』と共にラプチャーに立ち向かった事を・・・。
剣を収めて目を開けると、そこには新年の眩しい光が紅蓮を照らし笑顔になるのだった。
おまけヾ(・ω・*)
紅蓮の姉の薔花はいつか実装されてほしいなと(/ω\)♡
このイベントの当初は白紅蓮は持ってなかったのですが、黒紅蓮を鬼ガチャ回ししてる時に出ましたヽ(・ω・)/
紅蓮を待つ事・・・1年。
長い戦いでした♪
そろそろ、1.5周年と言う事でこちらのイベントも楽しみです☆
それにしても・・・・。
年末年始にやっていたイベントなのに、アップするまで時間がかかってしまったなぁと。
まだ紅く咲いているので、NIKKEは毎日ログインしますよ♡
長いのに最後まで読んで下さって有難うございました♪ゆいなでした☆
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